クラウドに潜むリスクと課題
近年、クラウドサービスの導入を推進する企業が増えています。
クラウドサービスは導入コストやランニングコストが低いため、社内情報システムの転換期にある企業や収益性を高めたい企業にとって魅力的です。
ところが、クラウドサービスにもリスクが潜んでいることがあり、注意が必要です。今、どのようにクラウドサービスの普及が進み、その利用上、何が課題になっているのかをみていきましょう。
普及の進むクラウドサービス
モバイルデバイスの普及などによって、情報システムはWindowsやMac OSに偏った環境から複数のアーキテクチャへの対応を求められています。専用の環境やアプリケーションを必要とせず、データ共有も容易なことも、クラウドサービス導入を後押ししています。
総務省の調査によれば、平成22年末から平成23年末にかけての1年間でクラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は14.1%から21.6%へ7.5ポイントも上昇しており、全社的に利用していると回答した企業も平成23年末には全体の9.2%にも上っています。
(参考リンク:総務省「国内におけるクラウドサービスの利用状況」)
まだまだこうした流れは今後も続くと思われます。
では、クラウドサービスを利用する上でのリスクや課題にはどんなものがあるのでしょうか。
クラウドサービスのリスクとは
セキュリティに関する懸念は以前よりありましたが、クラウドサービスには他にもいくつかのリスクが存在することがわかってきました。
その一つはサービス終了リスクです。オンラインストレージサービスの終了やリモートサービスの終了などの事例が代表的です。
サービス終了が事前に通知されている場合もあれば、突如終了することもあります。無償サービスであれば、法的にもサービス終了を止める手立てはほとんど無く、サービス提供企業が大手企業であればあるほど利用者サイドは無力です。
(参考リンク:突然のサービス終了通告、これがクラウドの落とし穴)
無償クラウドサービスの提供は不安定
これまで無償提供されていたサービスが有償化してしまうリスクもあります。
移行準備期間も数ヶ月程度しかないことがほとんどで、利用者は代替サービスを探して移行するか、有償化を受け入れて利用を続けるしかありません。時には代替サービスが存在しないこともあります。
また、サーバ障害により、クラウドに預けていたデータは消失してしまった、という事件もおきました。このようなアクシデントの可能性もゼロとは言えません。
(参考リンク:ファーストサーバ障害、深刻化する大規模「データ消失」)
クラウドサービスのリスク低減は実態把握から
企業でクラウドサービスを導入する場合、まずサービスの質を評価することが大切です。
無償で利用できる、業務効率の改善が見込めるという理由から、全社的に単一サービスの利用を促すといった行為は、クラウドサービスのリスクを自ら呼びこむことにもなりかねません。そのクラウドサービスの仕様変更や運用停止の影響を全社的に受けてしまうためです。
従業員にクラウドサービス利用の裁量を与えているなら、まず利用実態を把握することはBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の観点からも重要です。
単一の無償クラウドサービスへの過度の依存が見られた場合には、堅固な基盤を有する有償クラウドサービスへの移行を主導する必要も出てくるかも知れません。
クラウドサービスを忌避せず問題を解決する方法
サービス提供を安定的に受けることの出来る有償クラウドサービスへの移行や、法的整備を進めていても、災害や障害の発生によって、業務に支障が出ては元の木阿弥です。
バックアップ先として利用されることの多いクラウドですが、ローカルへのバックアップ体制を整備しておくことで、クラウドサービスのメリットを十分享受しつつ、利用を継続することが可能になります。
さらに、業務やデータの属性に応じて、社外サービスへの依存性について規定し、社内の制度を整備しておくことも必要です。
このように打てる手は全て打つことで、リスクを恐れることなく、クラウドサービスに業務を委ねることが出来るようになります。