データは上手にビジュアル化しよう
データとは、まるでエッシャーのだまし絵のようなものです。
元来、データそのものは何の意図も主張も持ち合わせてはいません。データとは単なる数値や文字の集合であり、視聴者の解釈によって如何ようにも意味の変わるものです。
ですが、見せ方を工夫することによって、視聴者に対して意図を伝えるものとなります。あるデータから導き出される多くの事実の中で、1つの事実のみを浮き彫りにする、それが「ビジュアル化」です。
視聴者に意図を伝えるビジュアル化
たとえあまり加工していないように見えるデータであっても、様々な見せ方の中から1つの表現方法を選んでいると言えます。その意味においては、全ての可視化されたデータは既にビジュアル化されていると言えます。
グラフの形式、色、タイトル、文字の大きさ。多くのものの中から1つを選び、可視化することは、ビジュアル化の基本です。上手なビジュアル化とは、可視化されたデータの1つ1つの要素が、視聴者に意図を伝える役目を果たせているものです。
データの見せ方が視聴者に与える影響
人と話すのに話術があるように、データの見せ方には「見せ術」と呼ぶべきものがあります。
例えば、業績が好調であるなどポジティブなイメージを視聴者に与えたい場合、左肩上がりの折れ線グラフを利用します。データに時間的要素が含まれる時、左から右へと時間が経過します。数値パラメータは上へ行くほどプラスです。そして、多くの視聴者も同じ認識です。
データの表示方法にはデータの出し手と視聴者との間で、コンセンサスがあります。これに逆らったビジュアル化は意図が伝わりにくいだけでなく、時には違和感や不快感を視聴者にもたらします。
チャートに付けるタイトル1つとっても、データの印象に与える影響は絶大です。タイトルが付けられているデータを目にした視聴者は、まずタイトルの意味を脳にインプットします。はじめにポジティブな意味のタイトルを目にすることで先入観が生まれます。次に目にするデータの中にもポジティブな要素を見出そうとします。
グラフやチャートの色は、視聴者の印象に影響を与えます。緑や青色のグラフは穏やかさや順調さという印象を与えますし、赤い色のチャートは加熱感や危機の増加を印象付けるでしょう。これは信号機の色が決められた理屈と同じです。青という色は空の色として自然界に存在する色で、心理的に落ち着く色であり、赤という色は血の色であり、視神経を強く刺激する波長を持ち、人間に注意を促しやすい色なのです。
タブレットのような端末を使用する際は、表示する向きも考慮する必要があります。時系列グラフは横長で見せるべきでしょうし、多数の項目がある横棒グラフであれば縦長画面の方が向いているでしょう。
視聴者に危機感を持ってもらいたい場合はどうするか
視聴者に、危機感を持ってもらいたいケースもあります。左肩上がりのチャートを赤い色で表すと、事件や事故の増加など注意喚起したい場面で有効です。
別の例では、営業組織のテコ入れを企図している場合、売上減少を示す左肩下がりの赤いチャートで危機感を強調する、などです。売り上げが増加していた頃のチャートなど、状況が良かったときのデータと対比させることで、危機的状況をクローズアップさせる効果を得られることもあります。
また、過去10年間の売り上げ平均など基準となるデータを用意することで、その危機的状況を示すデータの信憑性を補強することもできます。
視聴者に受け取って欲しい意図は何か
データを提示するにあたって、視聴者に何を伝えたいのかを押さえておく必要があります。
良いことなのか、悪いことなのか、安心させたいのか、注意喚起したいのか、参考程度でよいのか、緊急を要することなのか、などです。そして、データの出し手と視聴者との間で結論を共有することが重要です。
そのための道具がビジュアル化です。