BYODのデメリットは克服可能か
企業は、社員が個人的に所有しているPCやスマートフォンなどのIT関連デバイスを、セキュリティリスクや情報漏洩の観点から、業務で利用することを禁止してきました。
しかし、昨今では、個人所有デバイスの業務利用を認めるBYOD(Bring Your Own Device)導入を推進する企業が増えてきています。
BYOD導入のメリットは、社員が使い慣れた自分のスマートフォン、タブレットなどを使うことによる生産性向上や機器導入コストの低減などですが、企業が一度は職場から個人所有のデバイスを一掃したのには理由があったはずです。そのリスクは「BYOD」とネーミングされたことによって消えたのでしょうか?
どのようにして、企業はBYODのデメリットを克服しているのでしょうか?
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BYODはセキュリティリスクを呼びこむだけなのか
企業にとって、BYOD導入による最大のデメリットと言えるのが、セキュリティリスクの増大です。様々なデバイスが企業内に持ち込まれるBYOD環境下においては、ハードウェア仕様やOS、セキュリティパッチの適用もバラバラという状況になります。
これは一見するとデメリットでしかありませんが、視点を変えれば、これはメリットになります。BYOD対象機器も含めた社内インフラ全体を考えた時に、ダイバーシティ(多様性)という概念を持ち込むことになるからです。
画一化されたITシステムは、単一のセキュリティホールにより全滅する危険性をはらんでいますが、多様化によって、それを回避することができます。
さらに、BYODではセキュリティリスクへの対策として、MAM(Mobile Application Management)やMCM(Mobile Content Management)などを導入し、運用でコントロールすることにより、リスク低減を目指します。
社員にとってのBYODは負担増でしかないのか
社員にとってのBYODのデメリットとなり得るのが、社外での業務負担増です。自分の所有デバイスで業務利用できてしまうことにより、四六時中作業が可能となるためです。
社員が自宅で作業を行う場合は、一方的な負担増とならないよう、企業側でBYOD推進制度の設計/運用が必要となってきます。例えば、BYOD奨励策として、業務上で必要となるIT機器の購入代金の負担はもちろん、デバイスの購入代金、インターネットやデバイスの回線利用料の一部負担するなどです。
また、業務時間内の移動中や出先での業務利用は問題ありませんが、自宅に戻り、業務時間外の“BYODサービス残業”が起こり得ることも考慮し、対策を施さなければなりません。
BYODインフラ管理コストは重荷でしかないのか
BYODを導入した企業では、デバイスのセキュリティを管理する仕組みを導入する事が少なくありません。様々なBYODデバイスに対応するための社内インフラ整備も必要となることもあります。そのような業務に直結しないバックグラウンド・システムを導入する場合、単純にコスト負担増となります。
しかし、何かを導入するためのコストは、導入によって得られるメリットとのトレードオフです。BYODを導入することで、デバイス導入コストが減少するというメリットもあり、さらに、社員は使い慣れたデバイスを利用できるので、効率よく業務を遂行でき、生産性を向上することができます。
会計や税制改正などによりシステム変更を余儀なくされるものとは違い、BYOD導入は企業が自ら選択できる性質のものです。メリットがコスト負担増を凌駕する場合のみ、BYODを導入すればよいと言えます。
BYODは企業と社員にとってプラスかマイナスか
BYODにも確実にデメリットは存在しますし、1円のコストも払わずして、導入できるものでもありません。BYODのデメリットは、MCM等のシステムや運用面でコントロールすることで克服でき、企業と社員にとって、プラスになると考えられます。
そして、肯定的に捉えず導入しなければ、その先にあるメリットを享受出来ないのも、また事実です。