ノートPCはタブレットに置き換え可能か? 医療現場の電子カルテからヒントを探る
「これまでノートPCで作業していた業務を、これからはタブレットで行うことにしよう」と提案されたとき、イエスかノーで即答するのは難しいと考える人も多いのでは。そんなとき、何かよい事例があれば、判断の糸口がつかめるのではないでしょうか。
医療現場において、電子カルテで使用するノートPCをタブレットに替えたところ、よい成果につながっている事例があります。そうした事例をもとに、会社内の業務でタブレットがノートPCの代わりを果たせるかを判断するためのヒントを探っていきます。
市場拡大も期待される、医療現場での電子カルテシステム
現在、従来の紙のカルテではなく、電子カルテシステムを導入している病院が増えています。このシステムは、紙のカルテを電子化し、患者一人一人の病状や診察状況をデジタル情報として記録することで、パソコン上でいつでも新たなデータを追加したり参照したりできるようにしたものです。
複数の医療施設間で情報共有もできるなど、電子カルテの活用の幅は広く、市場拡大が期待されています。株式会社富士経済の調査によると、日本における電子カルテの普及率は、2012年末で21%、2020年末には37%と予測されています。
電子カルテの記録をノートPCからタブレットに代えたメリット
電子カルテは、医師との対面診断時以外でも、入院患者の巡回診断においても大いに活用されています。医療機器とノートPCを載せたカートを押しながら病棟内の患者一人一人を回診し、そのときの診断状況をノートPCで電子カルテに記録します。こうして記録されたデータは集約して共有もできるため、効率的に治療へ生かすことができます。
しかし、ノートPCは、小型軽量の機種を使っていてもカート内の収容スペースを占拠する上に、運搬時の重い荷物となっています。
医療ジャーナリストの北村昌陽氏の記事によれば、北海道社会保険病院では、ノートPCをタブレットに置き換えて巡回診断に使用したところ、カートの収容スペースを広げることができ、かつ運搬時の負担も減らすことができました。そればかりか、医療機器を使わない巡回時でもタブレットを携行して患者の状況を逐一電子カルテに記録することができるようになり、ノートPC以上の電子カルテ活用が実現できるようになったそうです。
置き換える業務の中で、文字入力はどのくらいの比重?
電子カルテの記録では、診察室での対面診断時のように医師が文字をたくさん記入する場合もある一方で、選択項目をチェックするだけといった作業も多々あります。その場合、ワープロソフトで文書作成をするほどの長文を入力する必要がないため、キーボードがなくても大きな支障はありません。
ノートPCは、キーボードがあるばかりにテーブルなどに置かなければならず、作業時の必要スペースが大きくなります。つまり、このようなケースにおいては、ノートPCのキーボードは、いわば無用の長物となっていました。
タブレットは、キーボードを使わずタッチ操作だけで情報を処理できます。そして、片手で持って操作できるため、作業のための置き場所を必要としません。
「紙のカルテと同じように片手で持って記録ができる」というのが電子カルテの理想です。これまでノートPCを導入して不便だった点をタブレットで克服できたからこそ、タブレットがノートPCの代わりを果たせたといえます。
「キーボードの必要性」がひとつのヒント
文書作成を中心とした業務ではキーボードの必要性が高く、ノートPCからタブレットに代えてもデメリットのほうが大きいでしょう。しかし、キーボードの必要性が低い業務では、ノートPCの代わりとしてタブレットを活用するほうが可搬性や片手で持てるなどの利便性が高まり、メリットとなる可能性が高くなります。
ノートPCにあってタブレットにはないもの、それはキーボードです。タブレット化を検討している業務においてキーボードの必要性を見極める事で、ノートPCからタブレットに置き換えられるかどうかの判断のひとつの糸口が見えてくるのではないでしょうか。
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