サバイバルツールのようなAndroidタブレット「Earl」
Android OSの長所は、誰でも自由に組み込んで製品を開発できる点です。それだけに、まれに異端児のようなデバイスも登場します。今回ご紹介する米Sqigle社のAndroidタブレット「Earl」はその1つで、ネットインフラが整備されていない環境でも活躍する、いわばサバイバルツールのようなタブレットです。まだ日本国内含め正式に発売されていませんが、すでに日本からも関心が寄せられています。
最先端のタブレットと一線を画すEarlの機能
Earlは、アメリカで開発が進められているAndroidタブレットで、野外の過酷な環境下での使用をコンセプトに作られています。iPadやGALAXY Tabのような、先端技術を組み込んだ最新鋭のタブレットとは、搭載している機能の方向性がまったく異なります。
ディスプレイには、消費電力を抑えることを優先し、なおかつ太陽光の下でも見やすいように、6インチの電子インクスクリーンを採用しています。またバッテリー切れに備えて、背面には太陽電池パネルを装備し、補助充電機能も備えています。
野外での使用を前提としていることもあり、耐衝撃・防水設計は万全です。それに加えて、温度や湿度、気圧、風力、風向きを測定できる気象センサー、単独で動作するGPS機能、さらにはラジオまで内蔵しています。
一般的なタブレット同様、Wi-Fiでのインターネット接続機能も備わっています。メールやウェブサイトの閲覧はもちろんのこと、Androidアプリもインストールして使うことができます。
災害用情報機器としても最適、工事・建設現場でも活躍の予感
GPSや気象観測機能を備えているため、Earlは登山やトレッキング用のタブレットとして最適ですが、使い方次第で業務にも応用できます。
たとえば、山岳や砂漠、森林地帯、あるいは離島での現地調査にEarlは活躍します。GPSで位置情報も常に把握できるので、リュックの傍らに掛けておけばいつでも手にとって使用できます。
耐衝撃性と防水性を生かせば、工事現場や建設現場でも活用できます。6インチサイズなので作業着のポケットに収めやすく、作業マニュアルをPDF化しておけばいつでも取り出して参照できます。
サバイバルツールとしてのタブレットは、視点を変えれば災害活動用の端末に応用できます。長時間のバッテリー駆動と太陽電池での充電、そして内蔵ラジオは、災害でネットが使えない場所で威力を発揮します。防災に役立つアプリや電子書籍を入れておけば、災害ボランティアとして被災地での活動の際に大いに役立つでしょう。
クラウドファンディング生まれのAndroidタブレット
Earlは、クラウドファンディング(インターネットなどを通じて不特定多数の人から資金を調達する行為)を利用して開発された点も異色といえます。資金調達はすでに終了し、目標額の25万ドルをはるかに上回る67万8,000ドル以上の額が集まりました。これまでにない新発想のAndroidタブレットに対するマーケットからの期待がうかがえます。
予定では、Earlは2013年中に製品化されるはずでした。しかし、開発が遅れて現在も予約受付中のままです。なお、日本での発売は未定です。
堅牢で強靱な製品といえば、日本のモノ作りが得意とする分野です。日本製タブレットは、アップルやサムスンといった海外勢とくらべると、まだ目立たないことも多いですが、Earlの登場はこのような状況を変えるきっかけになるかもしれません。Earlの日本での発売が待ち遠しい一方で、Earlのような新発想のタブレットをヒントに、メイドインジャパンならではのタブレットが生まれることも期待したいと思います。