イギリスの医療機関、モバイル化計画でセキュリティを重視~新規OSやMDMの導入へ
1999年に初めて市販されたBlackBerryは、モバイルデバイスから社内ネットワーク、Emailへの接続を可能にし、瞬く間に世界のビジネスマンの必須アイテムとなりました。
BlackBerryの天下は永遠に続くと思いきや、2007年のiPhoneの登場以降、衰退の一歩を辿るのみです。2009年に50%あった市場シェアも2013年にはわずか3%まで下落しました。今回紹介するイギリスの医療機関University College London Hospital(UCLH)のモバイルテクノロジーへの新たな取り組みは、BlackBerryへの不信から始まりました。
photo credit: brykmantra via photopin cc
UCLHの新たなモバイル化計画-他のOSやMDMを新規導入
近年、英国民保険サービス(NHS National Health Service)のIT化については、National Program for IT(NPfIT)の失敗で巨額の損失を出したことが影響し、新規計画については風当たりが強い状況にあったようです。そのような中、UCLHのICT担当ディレクター、ジェームス・トーマス氏は、モバイル化プロジェクトを立ち上げていました。
モバイル端末については、同病院は1年半ほど前までBlackberryしか使っていませんでした。ところが、その後、BlackBerryの障害がわずか2~3ヶ月の間に2件立て続けにあったのです。
BlackBerryの将来性にも疑問を感じ…
また、トーマス氏があるイベントに参加したところ、BlackBerry Enterprise Serverを今使用しているかという質問が出てきたときには、3分の2の人が手を上げたにも関わらず、将来も使うかとの問いに手を上げたのは、わずか25%でした。
この結果に驚いたトーマス氏は、先の障害によるBlackBerryへの懸念もあったことから、複数のプラットフォームの導入の必要性について検討を始め、セキュリティ重視のモバイル化プロジェクトを新しくスタートさせたのです。
まずは、iOSの信頼性が高いと思われることから、iPhone 4と4Sを導入し、また、BlackBerryと同等のセキュリティレベルを実現させるため、MobileIronのモバイル端末管理(MDM)を導入しました。その結果、BYODの検討を可能にし、院内で使用および承認プロセスを実施できるモバイルアプリストアを構築する土台を作ることができたのです。
レガシーシステムとの融合-退院手続き用アプリなどの導入も可能に
導入はスマートフォンから始めましたが、すぐに職員からタブレットも使いたいとの声が上がってきました。そして、導入アプリについては、臨床、臨床以外、患者向けの3種類に分けて検討を行い、新しいモバイル化プロジェクトが動き出したのです。
このプロジェクトでは、今でもレガシーで稼動している患者管理システムの上に、新しく開発したWebサービスを展開しています。これを利用して、今後患者の退院などの手続きを行うモバイルアプリを提供することなども考えられるでしょう。こうすることで、レガシーシステムの制約を解消することができたとトーマス氏は語っています。
UCLHの今後のモバイル計画-Windowsの導入も検討
UCLHは、現状、BlackBerryとiOS端末を導入しています。他のモバイル端末の導入に関しては、Windowsがエンタープライズ向けの機能が多いことから、今後検証していく予定です。Androidは、過去に2回評価した結果、必要なセキュリティ条件を満たすことができなかったので、この点をクリアしない限り、導入は難しいと読んでいます。
今後は、アプリ面での取り組みを拡大する方向で動いています。また、MDMについては今後もMobilelronを利用して展開していく予定です。
最後にトーマス氏は、「NPfIT後、NHSのIT化に対し世論は否定的ですが、UCLHを含め、一部の組織はこれに同調せずプロジェクトを進めてきました。私達は今、もっとオープンでコラボレーションできる世界にいます。全ての組織が同じではないことを認めつつ、助け合う限り、このイノベーションからもっと多くのものを得ることができるでしょう」と語っています。
まとめ
BlackBerryの将来性に早めに見切りをつけ、世論が厳しい中、新しいモバイル化計画に取り組んだUCLHは、みごとにそのプロジェクトを成功させました。切り替えに際してとった同病院の判断も、ぜひモバイル化計画を立てる上での参考にしてみてください。