タブレットを用いた未来型ショップ、小売業におけるタブレットとクラウドを使った「第3の棚」

2014/05/28

小売業において重要な二つの「棚」、店内で商品を陳列する棚と、消費者の家の中にある、購入した商品を載せる棚。もちろん後者は、本当に「棚」である必要はありません。タンスの引き出しやクローゼットのハンガーの場合もあるでしょう。これまでマーケターは、消費者が双方の棚の間でどのように行動するのかを解明すべく知恵を絞ってきました。

The Third Shelf

第3の棚

近年、その二つの棚とは異なる「第3の棚」というものが出現しています。マーケターは、この第3の棚を理解しなければならないと、リテールフューチャリスト(小売業の現在の流れから将来を予測する専門家)であるダグ・スティーブンス氏は指摘しています。

「家の中でも店内でもない所に存在する第3の棚。これは、消費者が(インタラクティブに)商品に触れ、それを吟味し、購入することができる場所、時間、機会のことである」と、スティーブンス氏は説明しています。そして、「モバイルテクノロジーは、小売業に、この第3の棚をどこにでも作りだすことができる機会を提供している」といいます。

この第3の棚は、オムニチャネルのひとつのソリューションともいえるでしょう。

サードシェルフ社

アントン・アザー氏は、モントリオール(カナダ)でその名もずばり「サードシェルフ(3つめの棚)」という会社を起こしました。

中小の小売業者は、往々にして少ない予算でライバルの大規模な業者と同じようなマーケティングの必要条件を満たさねばならないことがあります。サードシェルフ社は、そのような中小の小売業者を助けるソリューションを提供する会社として作られました。

サードシェルフ社では、モバイルアプリケーションとウェブプラットフォーム、そして消費者のデータをクラウドへ保存するサービスも提供しています。同社の技術により、消費者が店内を移動する間、小売業者は常に消費者とインタラクティブな関係を保つことができるようになります。

サードシェルフ社の作り出す未来型ショップ

消費者はまず、小売業者のアプリケーションをダウンロードします。そして、メールアドレスやFacebookのようなソーシャルメディアのアカウントを使って個人情報を登録します。これによってその小売業者は、その消費者のロケーションや嗜好などの貴重なデータを得ることができます。

消費者は実店舗に到着すると、ダウンロードしたアプリケーションを開きます。すると、過去の購入履歴や、貯めたロイヤリティポイントが何点になるのか等のお知らせが手元に届きます。

店内にはタブレットがいくつも置いてあり、消費者が店の奥へ入っていくと、それらのタブレットには今どんなプロモーションが行われていて、どんな商品が店に揃っているのかを知らせてくれます。消費者はそれらのタブレットを操作することで、展示してある商品についてのさらに詳しい情報を得ることができます。

中小規模の小売店では、フロアスペースの制限からすべての在庫商品を展示できないことが多々あります。しかし、このシステムのタブレットを通して今展示されているもの以外にどんな商品が入手可能かをチェックすることもできます。

一方、小売業者は、このアプリケーションを使っている消費者が店に入ってくると、システムからの通知により、そのことをすぐに知ることができます。店員たちは、この顧客が何を探しているのか、過去の購入履歴をもとに見当をつけられるなど、より1人ひとりの顧客に合ったサービスが提供できるというわけです。

「第3の棚」はアイデア次第

ダグ・スティーブンス氏は、「商品のための、この第3の棚をどこに作り上げるかはマーケターにかかっている」といいます。

サードシェルフ社は、リソースの限られている中小規模の小売業者が、大手企業と同じようなVIPサービスを顧客に提供するために、実店舗に3つめの棚を融合した未来型ショップを作り上げました。

しかし、3つめの棚はこのショップのような形態だけでなく、数限りない形で存在し得ます。たとえば、これからビーチへ遊びに行く予定のある人に、モバイルデバイス上のバーチャルショップでサングラスの試着や注文をしてもらい、それを直接ビーチへ届ける。あるいは、通勤電車が通る駅でインタラクティブなメニューを提供し、通勤客が仕事に向かう間にモバイルデバイスからランチを注文できるようにするなど。

今日では、タブレットとクラウドコンピューティングが新しいユニークなアイデアを強力にバックアップしてくれます。自社商品の3つめの棚をどこにどのように作り上げるかは、まさにマーケターの知恵くらべ・腕の見せどころとなるでしょう。

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