『現場が喜ぶ タブレット導入完全ガイド』
出版記念セミナーレポート

2014/08/13

インフォテリアは、先日日経BP社より上梓した「現場が喜ぶタブレット導入ガイド」の出版を記念して、2014年8月1日に「『現場が喜ぶ タブレット導入完全ガイド』 出版記念セミナー」と題したセミナーおよびパネルディスカッションを開催しました。

本エントリーではその模様をレポートいたします。

タブレット導入 成功の方程式は「目的」「セキュリティ」「アプリ」「利用定着」

最初のプログラムは書籍「現場が喜ぶタブレット導入」の著者であるインフォテリア グローバルモバイル推進室 室長の松村宗和が「事例から読み解くタブレット活用成功の方程式」と題して講演、成功事例の紹介とタブレット導入のポイントについて解説した。

成功事例の紹介では、「営業準備時間が平均13.3分削減された」というポリプラスチックス様や、契約までの期間が1/3まで短縮されたという営業担当者も現れた野村證券様を始め、具体的な成果が数値で見える7つの事例を取り上げた。

これらの成功事例に基づき、タブレット導入の成功ポイントを以下の4つにまとめました。

  • ・あいまいなままタブレットの導入を進めず、まずは導入の目的を決める
  • ・導入目的に合わせセキュリティ対策を固める
  • ・内製アプリは無理に手を出さない。コンテンツは制作部門を連携し準備を進める
  • ・社内もしくは社外に推進部門を作り利用定着を推進させる

導入が進む企業のタブレット導入。成功のポイントは

第2部では「成功するタブレット導入の秘訣とは」と題したパネルディスカッションを行った。パネリストとしてワンビ株式会社代表取締役社長の加藤貴氏、イシン株式会社代表取締役の大木豊成氏、およびインフォテリアの松村が参加した。モデレータは日経BP ICT研究所の星野友彦氏が務めた。
※以下パネルディスカッションは敬称略

IDC Japan の調査によると、2014年1~3月における法人向けのタブレットの出荷台数は、前年同期のほぼ倍のペースで伸びている。個人向けを合わせると、タブレットの出荷台数がPCを抜くのも時間の問題ともいわれている。現場ではどんどんタブレットの導入が進んでいるが、この状況をどうとらえていますか?
加藤
「当社は社外に持ち出す端末向けのセキュリティ製品を提供しています。現在ではほとんどの案件でタブレットが関係します。特に1年ほど前からはWindowsタブレットの案件が非常に多くなってきました。また、最近は単なるノートPCの代わりというだけではなく、POSレジなどの専用端末としてのニーズ、活用法が増えてきました」
大木
「タブレットの導入支援の案件は非常に増えている。電車の乗務員へのタブレット支給など従来PCが導入されていなかった現場への導入も目立ちます。『タブレットは導入しない』という会社はほとんどありません。もはや全員に同じPCを導入するという時代ではありません。営業部門はタブレット、管理部門はPCなどの棲み分けを進める企業が増えてきています」
松村
「従来であれば『タブレットは業務革新のツール』『タブレット導入ありき』で経営者直轄のプロジェクトで導入を検討する企業が多かった。しかし現在は地に足についた『カイゼンのツール』としてタブレットを検討している企業が増えており、ある意味、慎重になってきている」
加藤
「2012年までは、セキュリティに厳しい企業も多かったが、2013年以降から、ITを積極的に活用できるところはもっと伸ばそうとタブレットを導入する企業が増えてきた。また、スマートフォンが浸透してきたことで、持ち出し禁止とはいってられなくなってきた。会社から支給しているデバイスだけを厳しくしても仕事を効率化するために、なんらかの形でつないでしまう」
大木

「導入を躊躇している企業の中には、Outlookのメールをスマホに転送するような『勝手BYOD』や『シャドーIT』といわれる状況をユーザーが行ない、快適に使用している場合がある。正直、モバイル活用については情報システム部門よりユーザー部門が先に進んでいる。

また、情報システムの担当者でもネットで情報収集をすることですべてがわかったと思い込んでいる方と、実際にセミナーに足を運んで導入企業の実際の課題を知ろうとしている方とで二極化している。

当社に相談に来る企業も導入前に全体の計画を立てて進める方と、導入後に活用されない、どうやってコンテンツを入れるかわからないなどの相談を持ち込む方とではっきり分かれている」

松村
「タブレットを導入するIT部門の方に一番お伝えしたいのは「タブレットを入れる」「タブレットを守る」だけにならないでほしいということ。どうやって活用するかという目的とプロセスに対するノウハウを蓄積してほしい」
タブレットのコンテンツ活用について、電子カタログ以外で面白い活用例はありますか?
大木
「クラウドサービスを一つだけで満足してしまう企業も多いが、グループウェアや社内SNSなどいろいろなツールを導入することが必要。当社が支援している案件では農家の農場と事務所の情報共有に社内チャットを使っているところもある。そうした企業ではSaaS(クラウドサービス)をうまく組み合わせて活用している」
加藤
「人がデバイスを直接操作しないケースも目立つようになってきた。山奥の工事現場にタブレットを設置して遠隔でコントロールして情報収集するという使い方をしているところもある。設置に場所をとらず、機械に埋め込めるというタブレットの特性をうまく活用している。センサーと連動させるIoT、M2Mの端末としての活用も増えてきた」
松村
「農業での活用だとタブレットで温度、湿度、日照時間などの情報を収集し、いま何をすべきかを手元のタブレットに配信する企業などのケースもあり、パソコンが使われなかった箇所にも使われている」
フィールドワーカーの現場で活用が進んでいるとのことですが、逆にタブレットが向いていない職場は?
松村
「デスクワークの比率が高い職場では正直まだPCの利用がほとんど。現在のタブレットデバイスだけで業務をこなすのは厳しい領域だと思います」
大木
「セキュリティ自体を商売としている会社、たとえばホームセキュリティのような会社だとすべて専用端末とシンクライアントで構成されるため、他の企業のように自由に使うことは難しいかも知れません」
加藤
「面白い事例としてビルメンテナンスの会社ではノートPCにマニュアルを入れてメンテナンスをしていた。軽量なタブレットでの置き換えをいろいろと検討していたが、最後には両手で作業をしなければならないので手放しで自立するノートPCを選択されました」
20140813seminar_report_img01
次にタブレットのセキュリティについてお聞きします。会社で利用するのであればセキュリティは切っても切れない問題ですが、タブレットを活用する上ではどういうポリシーで臨むべきでしょうか?
大木

「iPadの場合だとサファリを禁止する、AppStoreを隠すなどの方法があるが、無闇に制限してしまうとタブレットでの業務が成り立ちづらい。特定用途で使うケースであればそのような設定も必要だが、性悪説で現場を考えていないとタブレットの活用は難しい。

情報システム部門や外部の開発会社に丸投げするのではなく、どういう設計にするのかユーザー部門も一緒に考える必要がある」

加藤

「セキュリティを厳しくしていくと、どうしても生産性を下げてしまいます。暗号化、証明書、パスワード、ウイルス対策ソフトなどを入れていくと、仕事で使うまでに何回もパスワードの入力を求めてくる。

そのため、すぐに利用しようと使う側はそれらのセキュリティを解除したままで持ち出してしまいます。お客様のお話を聞いていると、デバイスを紛失する人は仕事を積極的に行って活躍している人が多い。

本来は処罰することで持出しを抑制するのでなく、積極的に仕事に活用して紛失したとしてもデータの漏洩をシステムで防衛することで会社側の役割です」

大木
「セキュリティポリシーは最大限に解釈して上手に使うもの。よく導入の際に聞かれて困るのが、特定の問題に対してではなく『(何が心配かわからないけど)タブレットを導入して大丈夫なの?』という質問。根拠のない不安にはこちらも対策できない。」
松村氏の講演では利用定着がポイントとして挙げられたが、実際にどうすればいいのか?
大木
「先日もデベロッパーズサミットに参加したが、4000台 の導入を行った某チェーンストアでは、ガチガチの厳しい状態でスタートして一度失敗したあと、社内の好きな人をエバンジェリストとして集めて業務時間内・外問わず活用を許可して利用定着につなげたケースがある」
松村
「利用定着は正直地道。資料をどう使っているかをちゃんと見ることが必要。こうなるとある意味Webマーケティングやデータ分析の世界に近づいているともいえる」
最後にタブレット導入に成功する秘訣を教えてください。
加藤

「タブレットを何でも使えると考えると導入が失敗することが多い。タブレットの得意な立ったままタッチで作業するPOS端末や医療用の電子カルテなどの利用が適していると思います。
もちろん、活用範囲が広がった分だけ紛失する機会も多くなってしまいますから、リモートワイプなどのセキュリティも忘れずに!」

大木
「オフィスで業務を行わない人であれば正直PCはいらない。全員同じPCじゃないと困るという考えは捨てて、会社の中にPCで業務をする人もいれば、タブレットだけで業務する人がいるというそれぞれの業務にあわせて端末を選ぶ発想を持ってほしい」
松村
「繰り返し伝えてきたように、配って守る、デバイス配って終わりでは駄目で、タブレット導入の成果をIT部門が中心となってリードすることが必要ではないか」

本日はどうもありがとうございました。

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