営業現場へのタブレット導入は全社視点で考える
~営業・管理部門間の衝突を回避するポイント~

2015/09/11
securitymeasuresfortablet

企業が新しいソリューションを導入する際、運用ルールの策定は管理部門の主導で行われることが多いもの。ソリューションを実際に活用する現場からは、現実に即さないルールに不満が噴出しがちです。タブレットの導入においても同様のことが言えるでしょう。

管理部門としてはリスクマネジメントの観点から、セキュリティの強化や端末管理を優先しますが、こうした施策は営業部門の現場サイドでは足かせとなり、結果的に活用するのが難しい状況となってしまいます。

今回はそのようなタブレット導入に際して、営業部門と管理部門の現場サイド間で衝突が生じがちなセキュリティ対策を例に解決ポイントを考えていきます。

セキュリティ対策で営業と管理の思惑は、なぜ、かい離するのか

たとえば、営業の現場に立つ担当者としては、顧客先でタブレットを取り出したらすぐに使える状態が望ましいのは言うまでもありません。タブレットを利用する度にアカウントのログインが必要という手間が発生することは利用の自由度を損ないます。

しかし、管理部門としては「すぐに使える」状態でログイン不要の状態はタブレットの紛失、盗難などが発生した際のリスクを考慮すると到底認められるものではありません。

可能であれば強固なパスワードを設定したり、幾重もの認証を設定して万一に備えるべきだと考えます。全体視点では「会社という組織体の存続・成長」という目的は同じであるはずなのに、なぜ、両者の思惑にかい離が生まれてしまうのでしょうか。

組織内論理により営業と管理の相反は必然と言える

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よく言われることに「営業部門は攻め」、「管理部門は守り」という業務に対するスタンスの違いが挙げられますが、それだけがすべての理由ではありません。両サイドの利益創出の考え方に大きな隔たりがあることや、人事考課における評価指標の違いなども複雑に関与しています。

少し極論になりますが、営業部門は売上を計上することで利益を創出することが業務におけるミッションであり、考課における評価もその点が大きく関与します。そのため、売上を立てるための行動に最適化しがちです。

一方で管理部門は利益創出のために固定費や経費などの圧縮をすることで利益を捻出し、万一の大きな出費などの可能性を極力排除することで業務の継続性を担保しようと行動していきます。考課においても当然、これらの部分が重視されてきます。

こうしたそれぞれの業務における違いで生まれるかい離は、企業で新しい試みをおこなう際には避けて通ることができない問題です。これまでタブレットを利用していなかった企業がタブレットを営業ツールとして導入する際にかい離が発生するのは、企業という組織体としてはある種、必然とも言えるでしょう。

セキュリティルール設定のポイントは企業としての「継続性」

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企業は、売上・利益を上げなければ、存続することはできません。そのために営業部門が存在することを考えると、営業部門の活動を阻害することは、すなわち企業体としての存続を脅かすことであるとも言えます。むしろ営業部門の活動を後押しすることが存続・繁栄という点からは望ましいとすら言えます。

極論を言ってしまうと、営業サイドの視点ではタブレットは導入するべきとなります。なぜなら、ビジュアル的に新たな見せ方ができたり、さまざまな資料を効率的に持ち運べたりするといったメリットが大きいためであり、それがひいては売上の増加に結び付くからです。

もちろん商材の特性によって異なる部分はあるものの、仮に導入コストを考慮しない場合、導入しないという判断をすることは少ないはずです。また、使用におけるルール策定をする場合も、営業視点での使いやすさが最優先されるべきであり、阻害する要素は極力省かれるべきです。

しかし、タブレットはさまざまな重要な資料を詰め込むことができたり、デジタル端末としてさまざまなデータやツールを保有できたりするため、セキュリティ上のリスクに晒されます。たとえば個人情報閲覧用のアカウント情報がその端末に入っているといったことも考えられるでしょう。

そのアカウント情報が漏えいし、個人情報が不正利用されたときには、企業として大きな損失を被ることは言うまでもありません。もし仮に100人の顧客データが不正利用され、損害賠償として一人あたり100万円の補償をおこなわなければならない場合、1億円の損害となります。

アクシデント発生後の信用棄損によるダメージも考慮すると被害は計り知れません。タブレット導入で月間100万円の売上の増加につながっていたとしても、このようなアクシデントが発生すれば、一瞬で水泡と帰します。だからと言ってこのようなセキュリティリスクを踏まえた結果、タブレットを導入すべきではないというのも少し早計すぎる判断と言えます。

営業部門が活用の理想像を描いてから現実案へすり合わせる

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それではどのようなプロセスで判断していくことが望ましいと言えるのでしょうか。このような判断をする際には、まず理想の利用状況を実際に利用する側すなわち営業現場側が描いてみたうえで、双方の視点から活用方法の調整をおこなうのが良いでしょう。

たとえばウェディング会社を例にとって考えてみましょう。ウェディング会社の営業では結婚式を挙げる予定のお客さまに対し、自社の式場で挙げることの素晴らしさを伝え、できるだけ式を挙げるイメージを具現化させることが成約のポイントとなります。

しかしながら、お客様の来場時に実際の会場が利用中で確認できないケースが少なくありません。そうした状況でタブレットを利用したバーチャルツアーを提示することで実際の現場を見る行為を補完することができます。また、お客さまの情報をタブレットで収集して来場以降のフォロー活動に役立てる、ということも考えられます。

どちらも営業活動の向上へ寄与するものの、後者の個人情報の収集は個人情報の漏えいという、セキュリティリスクとセットとなります。その場合、バーチャルツアーはOKでも、個人情報の収集はNGという判断が考えられます。その一方で、個人情報の収集もOKとする場合は、タブレット自体には情報が残らないようなセキュリティ対策を行う必要が出てきます。

これらは、営業部門だけでも管理部門だけでも決められないことになるため、双方でセキュリティに関する打ち合わせの場を持つことが必要です。また、打ち合わせの際にはタブレットを利用する営業部門側が利用イメージを具体化しておくことが重要です。その上で、かけられる予算や費用対効果を踏まえて、どのようなセキュリティ対策が必要かすり合わせをおこなっていくのが望ましいでしょう。

また、実際に活用を開始した後に、タブレットを利用する状況を踏まえながら調整をしていくことが、タブレットをうまく活用していくポイントとなります。ここでは、先のウェディング会社の例をもとに2つのケースを考えてみましょう。1つは、個人情報をタブレットで収集しようと考えていたが運用開始後、お客様がタブレット入力よりも紙の受付票への記入を望まれることが多かったケースです。

そしてもう1つは、お客様が来場前にウェブなどで入力した情報をベースにした接客を望まれており、タブレットでシームレスにおこなっていきたいケースです。前者は機能の削除、後者は機能の追加となりますが、時間の経過とともに、多くのケースが発生するものと見込まれます。このような場合にも営業部門側が主導で利用イメージを提示して管理部門と調整するというプロセスを踏むことで、実情に合った運用が可能となります。

また、リスクに関する考え方も両部門の間ですり合わせを経ることでアクシデント発生時のリスクを理解し、営業部門と管理部門で折り合いがつくはずです。営業部門もリスクを無視し、自身が積み上げた売上が瞬時で吹き飛ぶようなことは望まないでしょう。

まとめ

今回は営業現場へのタブレット導入における営業部門と管理部門の相反するポイントについて考えてみました。新しい施策の導入時は前例を踏襲できないことから、どうしても管理部門としては見えないリスクを想定するため消極的になりがちです。

しかしながら、実際に運用する営業部門側がどう活用するのかを明示し、それをベースに協議をしていくことで、部門を超えて具体的な落としどころを探っていけるのではないでしょう。

利便性と危険性がセットとなるがゆえ、双方が自身のミッションに沿って厳格になればなるほど、反目しあうのは必然です。しかし、大きな視点に立ってみると、営業部門と管理部門は結局のところ会社の存続・繁栄ということが最大のミッションでこれは共通のミッションとなるはずです。

タブレットの導入に限らず、両部門で協調し、会社として「使っていこう」という姿勢を持ち話し合いを進めていくことが最も大事なポイントとなるのではないでしょうか。

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