セールス・マーケティング・テクノロジーとしてのタブレット

2013/06/10

一ヶ月ほど前の記事ですが、タブレットの企業活用にあたって興味深い記事が出ていました。

タブレットやスマートフォンをはじめとしたスマートデバイス、ビッグデータ、クラウド…。新たな情報技術が企業情報システムに次々に取り入れられているが、その現場では時に“IT部門外し”が起こっている。

実際、Handbookの導入に際しては、IT部門主導よりマーケティングや営業などのユーザー部門主導が多かったのは事実です。

カタログ印刷発注に似ているタブレット導入

こうしたパターンでは、タブレットとHandbookの費用はセールス支援やマーケティング予算から出てきます。

これは、カタログ・パンフレットの印刷発注や、マーケティング・メールの配信サービスの契約というようなものと同様に、タブレットとHandbookが導入されているためと予想できます。つまり、IT部門が管理するような「システム」ではなく、「マーケティングテクノロジー」の一つという位置づけです。

マーケティング部門が主導で「マーケティングテクノロジー」を採用する例が増える背景には、

  • ・クラウドによるシステム運用コストの軽減
  • ・利用者のITスキルの向上とサービスのユーザビリティの向上
  • ・現場に求められる変化スピードの速さ
などが挙げられるでしょう。

特に「デジタル・マーケティング」が定着する中で、マーケティング部門がテクノロジーに強くなってきていることは重要な変化であると言えます。

多くの会社で、ウェブの運営やアクセス分析、メール配信、その反応率分析などはIT部門ではなくマーケティング部門の仕事になっています。タブレットはそうした「マーケティング・テクノロジー」の1つとして導入され、そこにIT部門の関与が必要とは認識されなかったのです。

増加する「マーケティング・テクノロジー」への本格的な投資

しかし、最近ではIT部門が積極的に関与して成果を狙う事例が増加しています。企業全体の競争力獲得のためのタブレットの導入を進めている企業が増えているためです。

そうした企業はタブレットをカタログ・パンフレット代わりに導入して終わりではありません。

タブレットの登場によって営業担当者が大量の情報を機敏に駆使することが可能になった上、利用者の操作の情報や顧客の反応などを極めて簡単にデータとして記録ができるようになったのです。

特に、営業担当者のコンテンツ利用の情報、ウェブの情報、コールセンターの情報など全てのコンタクトポイントの顧客情報を集約して、有効な営業・マーケティング・プロセスを再構築する企業が増加しています。

いわゆるクローズド・ループ・マーケティング(CLM)やマルチチャネル・マーケティング、O2O、オムニチャネル・マーケティングなどの取り組みです。

そうした企業はタブレット導入とセットにして大量の商品関連情報や顧客情報、活動情報を有効活用する枠組みを構築し、営業・マーケティング・プロセス全体の変革を目論んでいます。

こうした新しい基幹システムの構築はIT部門の存在価値であり、IT部門とユーザ部門とのコラボレーションに基づいた変革を進めることができるのです。

「攻め」のIT投資のために

日本では営業・マーケティングなどの「攻め」の領域へのIT投資が少ないとよく言われます。

その理由のひとつには「マーケティング・テクノロジー」を本質的な強みとする企業が少なかったためではないかと考えます。ウェブは企業活動の「おまけ」でしかない企業が多いでしょう。

しかし、営業担当者が紙からタブレットへシフトすることで、無視の出来ない変化が起きます。大量の情報を営業担当者が顧客の前で活用することが可能になり、その上、営業の活動情報や顧客のフィードバックの情報などが手軽に取得できるようになります。これらの情報を活用できる可能性のある企業は多いでしょう。

試験的なタブレット活用の時代が終わりつつあります。本格的なマーケティング・テクノロジーへの投資が、今後の競争力に大きな差を与える時代が到来し、その重要なピースとしてのタブレットの導入が進んで来ているのです。

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