停滞する日本でイノベーションを起こすために必要なコトとは?~アドテック東京2015 2日目参加レポート~

2015/12/11
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2015年12月1、2日の2日間に渡って有楽町の東京国際フォーラムにて開催されたアドテック東京2015。本開催は「Where innovation happens」と題して各種プログラムが組まれる中、キーノートに弊社の社外取締役であるAnis Uzzamanが登壇しました。Anisの講演テーマはずばり「テクノロジー戦争に備えよ、世界の最先端に日本はどう挑むのか」。 その講演内容は日本に5年間在住したAnisからの停滞する日本に向けた応援メッセージでした。

日本での生活を通じて納豆好きに

セッション最初のスライドに登場したのはなんと「納豆」。東工大工学部在学時には毎日のように学食の納豆定食を食べていたようで、気づけば納豆の「ファン」になってしまったとのこと。そうしたユニークな話を織り交ぜながらAnisは自身のキャリア、バックグラウンドについて語りました。

続けて話は自身の運営するベンチャーキャピタル「Fenox Venture Capital」の紹介へ。Fenoxの運用資産は15億ドル、シリコンバレーを拠点に世界のさまざまな国で投資をおこなっており、日本をはじめアジア地域でも多くの会社へ出資しているとのこと。中には日本のメタップスやドリームリンクエンターテイメントなど、すでにエグジットしたような事例が出てきている、ということでした。

参考:Fenox Venture Capital

次のトレンドはロボティクス、生活スタイルは大きく変わる

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自己紹介パートに続けては技術革新をもたらすイノベーションの話へ。現在はiPhone登場からはじまった、スマートフォンの普及という大きなトレンドの渦中であり、次のトレンドはロボティクスになるだろう、という見解を示しました。

ひとつの例として、今年電通やKDDI、そしてAnisのFenoxからも出資を受けているJIBOを取り上げました。今後各個人のデスク上には一人一台のロボットが置かれ、そのロボットはまるで執事かのごとく振る舞い、作業の代行もおこなうことになるだろうとのこと。他にも医療用向けをはじめ、さまざまな用途のロボットの研究・開発が現在進んでおり、たとえばインターネットを介して、シカゴの医者がアフリカの患者に対して手術をおこなう、といったことも近い将来実現していく見込みです。こうした高度なロボットが製品化されて普段の生活に浸透していくことにより人々の生活スタイルは大きく変わっていくことと思われます。

参考:JIBO(英語サイトのみ)

参考:家庭用アシスタント・ロボット、Jiboが日本~ ―電通V、KDDI他からアジア展開のために1100万ドルを調達(Tech Crunch)

ロボット以外でのトレンドについてAnisが言及したのは以下の4つでした。

  • 1)AI(人工知能)
  • 2)3Dプリンターと新素材
  • 3)LiDAR技術
  • 4)インタラクティブな技術、AR(拡張現実)

1)AI(人工知能)について

現在Googleがリーダーとして技術革新を牽引し、開発者の支援までをおこなっており、今後AIが“Beyond Human Capacity(人間の能力を超える)”時期がまもなく来る、ということでした。

2)3Dプリンターについて

すでに普及期に入りつつあるものの、産業を大きく変えていくのはまさにこれからであり、それは素材の進化と合わさって起きるということでした。

具体的には、再生医療分野や宇宙産業などでの応用も見込まれており、とくに宇宙産業では大きくコストダウンに寄与することをNASAの実例を挙げて解説しました。

また、コンピュータの世界においても恩恵は大きく、たとえば3Dプリンターで新素材「グラフェン」を採用したCPUなど用いることで、バッテリー効率なども飛躍的に改善が見込める、とのことです。その他の分野含め3Dプリンター領域の市場は今後大きく拡大していくだろう、とのことでした。

3)LiDAR技術について

これまでにもすでにさまざまな実績が上がりつつありますが、進化していく技術でさらにさまざまなことに対応ができるようになりつつある、ということでした。この分野は2020年までに9億4千万ドル市場になる見込みとし、参入にはタイミングが肝であること、そしてすでにシリコンバレーではテスラモーターズが実用化一歩手前であることを挙げ、日本も早急に対応をしていくべきである、と提言しました。

4)インタラクティブな技術について

さまざまな技術を組み合わせることでリアルとバーチャルを連携したモノが産まれていくだろう、とのこと。たとえば、ホログラム技術の飛躍的な進歩、高度化するセンサー技術などが組み合わさることですべてを3Dで再現できるようになります。

最後にこのテーマの総括として、今後1)から4)で取り上げた技術群が組み合わさったりするなどでIoTも一層の進化を遂げ、より豊かな生活の実現へ寄与していくことだろう、とのことでした。

日本がイノベーションを取り戻すための2つのポイント

続いては日本のことに話は移りました。現在の日本は過去の状況と比較すると、とても残念な状態であるとし、「イノベーションインデックス」が2007年に日本は4位だったのが2014年には19位と下落しています。

また、NASDAQへの上場企業数はイスラエルや中国などと比較しても大幅に少ない16社しかありません。そして働きやすさランキングでも29位と低迷するなど、これらの数字は日本の現状がもはやイノベーティブではないことを物語っています。日本人はこの数字に対して危機感を持つべきであり、イノベーションを取り戻すためにしていくべきポイントを2つ提示しました。

  • 1)イノベーティブで新たなパートナーシップを組むべきである
  • 2)マーケティングが総じて弱いことを自覚し克服すべきである

1)イノベーティブで新たなパートナーシップを組むべきである

具体的には「イノベーティブな集団の中に入り込むこと」、「インキュベーション組織とリレーションすること」とし、シリコンバレーを例に挙げ、そうした動きが研究開発をさらに加速させるだろう、と述べました。

2)マーケティングが総じて弱いことを自覚し克服すべきである

具体的に「英語力の強化」、「プレゼンテーションスキルの向上」、「価値訴求視点」、「新領域・新市場へのフォーカス」を挙げ、アピールするためのベーススキルを強化しつつ、マーケティング手法をグローバル視点で変化させていくこと、としました。そして、まだまだ製造大国としての「Made In Japan」ブランドは世界的には評価が高い、という現状をうまく利用しながら、今後ますます市場の拡大が見込まれるような国、たとえばインドネシアのような国に積極的に参入していくべきである、と提言しました。

まとめ

本セッションの最後、Anisは「イノベーションを産み出すために、強力なパートナーシップとしてシリコンバレーを利用してほしい」、そして「いつまでも調査をするのではなく、まずは一歩を踏み出そう」とのメッセージでセッションを締め括りました。

これはアメリカと日本の双方に在住したからこそ出てくるAnisならではの激励であるように感じました。また、今回のセッションを通してAnisがところどころ強調していたのが世界の動きに対する日本の出遅れについて。途中の「Time Is Money」という言葉や、事例で海外の動きと日本の動きとのズレをあげるなど、グローバルレベルでのスピード感の欠如している状況に警鐘を鳴らしているように感じられました。

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