売ってないのに売れる。タブレットが「取引先から指名される美容ディーラー」を作る時代に

美容室飽和状態に伴い、1店舗あたりの売り上げが下がる一方の美容商材卸業にありながらも、「貴方のオススメなら仕入れましょう」とオーナーから絶大な信頼を得ている勝ち組美容ディーラーは存在します。彼らの商談には、あるひとつの統一した販促理念があります。

美容室の目線に立つと販促方法が見えてくる

その販促理念とは、「製品を売らず、ソリューションを売る」こと。

どうやって顧客に自社製品を売るのかではなく、「どうすれば美容室の売り上げアップに自社が貢献できるのか」を、取引先である美容室と一緒に考え、解決法を探し出しているのです。

たとえば「単価アップが狙えるトリートメント製品」を売ろうと思っても、その製品がいかに素晴らしいかをマニュアル通りに説明するのではなく、その製品が当該美容室の持つ悩みにどう応えられるか、どんなソリューションをもたらすのかを説明するのです。

製品に「単価アップが狙える」という特長があっても、美容室側の悩みやウォンツがそこになければ、仕入れるほどの魅力的製品ではありません。勝ち組ディーラーはまず始めに、オーナーがどんな悩みを持っているのかを探り、ソリューションアドバイスをする形でお勧めする製品をセレクトし、提案しています。

なぜそんなまわりくどい手間をかけるのか。そこには美容室業界であれば誰もが身に染みて感じている、マーケットの厳しい現実があります。

厚生労働省の調査では、平成26年3月末時点の美容所数は23万4,089施設で前年度比1.3％増加しており、年々減少する人口に相反しています。また、これを裏付けるように、経営者の多くが第一の問題として「客数減少」を挙げています。

客数減少にともない、集客のために価格の引き下げやクーポンの発券、経費削減、メニューの見直しを余儀なくされた美容室オーナーにとって、美容商材の仕入れ額を増やしたり、新製品に切り替えたりする行為はリスクが高く、単に「良い製品だから」と仕入れられないのが現状です。

そんな時に美容ディーラーが最新製品の営業に来てせっせと説明を始めても、聞く耳を持てないのが正直なところ。だからこそ勝ち組ディーラーは、まずは美容室の経営を明るくする手助けから始めるのです。

オーナーの悩みに寄り添い、解決につながる製品の提案をするために、タブレットが一役買います。タブレットには、取引先リストと個別の購入履歴やヒアリング情報、そして自社のあらゆる製品カタログとシミュレーション動画などを収められ、オーナーの悩みやウォンツに合ったデータを取り出して提示することが出来ます。

データと言っても製品データとは限りません。ときに過去の成功事例であったり、市場調査結果であったり、製品に直結しないことでも、オーナーの悩みを解決できることであれば、積極的に提供します。

たとえば、競合他店に比べ自店の客数が減少したと感じているオーナーに、商圏エリアマップやエリア単価表など、ディーラーだからこそ作成できる分析データを提示し、浮かび上がった問題を解決する起爆剤として、自社製品をお勧めするなどが挙げられます。

タブレットに収録することで膨大な情報を蓄積できるので、紙の資料のように必要最低限だけを持ち歩いて、「しまった！あの資料も持って来れば良かった！」などの後悔とも無縁です。

また、営業中の限られた時間で端的に製品特長を伝えたい時は、紙のカタログではなくタブレットに予め入れておいた動画を使い、じっくり文章を読まなくても製品特徴が分かるようにします。希望があれば美容室にもデータ共有し、時間がある時にゆっくり見てもらうのもいいでしょう。

それなら紙のカタログでも良いのでは？と言う意見も聞こえてきそうですが、作業時間が長く休日が少ない美容室の現場で、山積みになった製品カタログから気になった1冊を探し出すのは億劫で、ついつい読まないまま……という話も少なくないのです。

タブレットやスマホを開けばすぐに見られ、しかも文章ではなく動画であれば、見る確率は上がります。

複数の美容ディーラーの経験や知識を「Handbook」などのクラウド管理ツールで共有すれば、なお充実した情報提供が可能になり、美容室側にとっても、より多くの事例や市場の動きが分かる、有り難い機会となります。

この意識改革をすることが、「貴方のお勧めなら、仕入れます」と言われる勝ち組美容ディーラーになる秘訣のひとつと言えそうです。