営業でのMCMを活用、その歴史

2019/07/22

日本企業の伝統的なプロモーションプロセスは実にユニークであり、今でも根強く残っています。既存顧客の対応はもちろんのこと新規開拓についても、営業担当それぞれが持つ知見や人脈頼みであり、営業組織が異なれば同じ会社でもまるで別会社のようです。

しかし時代は変わりました。データは紙からデジタルベースに変わり、デスクトップPCからノートPC、そして2011年にはモバイル全体の出荷台数がPCの出荷台数を超え、2014年にはモバイルユーザー数がPCユーザー数を超えました。モバイルが人にとってオンオフ両方の生活で、切り離せないものとなったのです。

少し前の営業スタイル

以前日本で一般的だった営業スタイルは職人の仕事と似ています。つまり手取り足とり教えることはせず、技術を身につけたかったら盗んで覚えよという方式です。手の内は自分の頭の中だけにあり、それを他の営業担当と共有するなどもってのほかで、将来訪れるモバイル共有の時代など、誰が想像したでしょうか。

また営業ノウハウを自分自身にクローズすることで企業における自分の存在価値を大いに誇示できるのも、営業担当のアドバンテージだったのです。加えて言えば営業担当でありながら技術支援までこなしてしまう職人のようなツワモノも、以前の方が多かったように思えます。

しかしどんなに優れた営業担当であれ、いつか引退の日がやってきます。それぞれの担当者の頭の中に存在する企業の財産とも言える営業ノウハウが、引退前に後を担う人間にうまく引き継げず、その結果企業にとって大きな損失となることも少なくありませんでした。

インターネットが変えたもの

インターネットの普及によりユーザーがインターネット上で検索をし、最新情報を自分で入手できるようになりました。その結果、ユーザーは必要な知識をあらかじめ有するようになり、製品の機能がどの程度揃っているか、どこまでシステムで実現したいかなど、商談の場では具体的な要件の提示や質問ができるようになったのです。

インターネットで案件クローズまで行うことも珍しくない欧米企業に比べたら、決断までに時間がかかるのが日本企業の特徴とはいえ、ついにインターネット時代に合った営業改革が求められました。

まずB2Cのプロモーションがデジタル志向となり、モバイルを介したインターネット上でSNSや動画を利用した方法にシフトしていき、その後B2Bでもインターネット上でユーザーの心を掴むコンテンツを継続的にリリースすることが、個の能力に頼る営業スタイルに風穴を開けたわけです。

モバイルファースト

「PC画面を単に携帯電話やタブレットに移植する時代は終わり、ついにモバイルファーストを開発する時が来ました。モバイルファーストとは、モバイルサイトならではのユニークなものを制作することなのです」。

これは2009年4月にサンフランシスコで開催されたWeb 2.0 Expoにおいて、当時Yahooのサイエンティスト兼バイスプレジデントであったMarc Davis氏の発言です。当時のアメリカでモバイルと言えばBlackberryに代表される、画面が小さい白黒の携帯電話でした。

当初開発手法の方法として紹介されたモバイルファーストでしたが、2014年にはWeb制作に際してデバイスの画面サイズに依存しない手法である、レスポンシブデザインを前提とすることが一般的になり、モバイルファーストにコンテンツ管理システム (Content Management System=CMS) の概念が加わるようになりました。

MCM登場

1990年代には営業担当が厚いカタログの代わりに、A4サイズのノートPCを持ち歩く時代がやってきましたが、自社サーバーのコンテンツに直接アクセスして顧客に提示するというより、コンテンツをあらかじめ自分のPCにダウンロードしてオフラインでの利用でした。

その後スマートフォンやタブレットなどのモバイルが一気にブレイクしたことから、モバイルデバイス管理 (MDM)が広まり情報の持ち歩きが楽になりました。しかしMDMがハード、ソフト、データといったモバイル端末全体を管理するものだったため、個人所有の端末を仕事に活用するBYOD (=Bring Your Own Device)で利用する場合に、セキュリティとプライバシー問題が生じたのです。

そこで登場したのがモバイルでコンテンツを管理し、モバイル環境下でのコンテンツ閲覧や編集を可能にするモバイルコンテンツ管理(MCM) でした。

多くのデータが秒刻みで変化し、可能なものは直ちにスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末経由で共有されます。ユーザーのニーズもそれに連動して、「今すぐに見たい、聞きたい、経験したい」なので、そのチャンスを逃すとユーザーは簡単に離れてしまうものです。

MCMによりリアルタイムで最新情報の共有ができ、必要であれば古いバージョンのデータもすぐに確認可能。電源を入れたら即システムが立ち上がるため、PCのように起動するまでの待ち時間ゼロですので、営業担当が客先でモバイルを使う上でも、顧客、営業担当共々データ照会には何らストレスを感じません。

MCMで職場環境は変わるはず

MCMで実現できることはたくさんありますが、もしかすると搭載されている機能が企業の需要によっては多すぎるために、うまく活用ができていないかもしれません。MCM導入を有意義なものにするためには、何でもできるからMCMを導入するのではなく、MCMで何をしたいか、営業支援ツールとしてなのか、教育ツール、社内システムあるいは複数の用途に活用したいのかを洗い出す必要があります。

実現したい方向性を定めたら、次は具体的にどう使うかです。従業員からアイデアを募集しても良いですし、MCMの既存ユーザーに話を聞いてみるのも良いと思います。

具体的な活用例として、いくつか挙げてみましょう。

1)社内システム

少子高齢化の影響で、どの業界も人手不足です。MCMと会議システム、勤怠システムとの連携で、今まで通勤不可で雇用がむずかしかった地方や海外在住のポテンシャルの高い人材を、リモートでなら採用しやすくなります。MCMで配信したコンテンツを用いて自宅からでもオフィスとビデオ会議ができ、上司はリモート社員の勤怠をMCMで見える化できるので安心です。

またモバイルを通してデータが安全に配信され、どこからでも同時に閲覧できれば、社内会議用資料の印刷も不要になり、経費削減になることは明らかでしょう。

単に人員を増員しただけではスキルがまちまちで、できる担当者だけに仕事が集中する状況は変えられず、仕事の分散化が極めて困難なもの。そこでMCMに育成用のeLearningコンテンツを搭載すれば、社員は隙間時間を活用して必要な知識を学べるので、短期での人材育成のためには大変有効ですし、スキルの均一化のスピードアップを推進できる点も画期的です。

2) 営業支援システム

MCMで営業資料を共有することで、誰もが同じ資料を使ってプロモーションができます。またMCMを介してデータ更新もリアルタイムなので、誰もがストレスフリーな環境で、最新の情報を駆使したスピード重視の営業活動ができるようになります。

事前にファイルをダウンロードすることで、オフラインでも利用できますので、営業先にインターネット環境がなくてもモバイルで対応できます。もちろんドキュメントファイルだけでなく、音声や映像、Web技術を駆使したコンテンツも利用できるので、MCMにより高度なカスタマーエクスペリエンスや、最近話題のセールス・イネーブルメントへの応用が可能になるのです。

まとめ

今回は世の中がMCMに到るまでのお話をいたしました。MCMは「コンテンツを管理する」という機能面に主眼が置かれてそれをどう活用するかが検討されていましたが、現在では、営業チームの属人化解消なら「営業コンテンツの統一化」、営業人材の育成であれば「短時間でのスキル習得」、営業会議の効率化であれば「ペーパーレス化の実現」など、課題に対する解決策を明確に定め、その目的を達成するための手段としてMCMが選択・活用されています。MCMに限りませんがツールはあくまでもツールなので、それを生かすも殺すも人の仕事です。導入目的をしっかり定めてMCMを活用する先には、成功が待っています。

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