Windows 10搭載の新ブラウザ「Microsoft Edge」はモバイルに新しい可能性を提示するのか?

2015/07/08
microsoft_edge_logo

米Microsoftは現地時間6月29日にまもなくリリースとなるWindows 10のビルド10158をリリースしたと発表しました。今回のビルドでWindows 10においては安定性の向上とUIのブラッシュアップなどを対応しましたが、中でも目玉は「Project Spartan」から「Microsoft Edge」への置き換えと言えるでしょう。今回の記事ではその「Microsoft Edge」に焦点をあて、基本的な機能や変わったことのまとめと「モバイルにどういった影響があるのか?」について触れていきます。
「Microsoft Edgeで結局、どうなるの!?」と思っている方はぜひ、ご一読ください。

1.Microsoft Edgeの発表とInternet Explorerの廃止

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基本的なことの前に、まず「Microsoft Edge」をめぐる経緯について振り返っておきましょう。2014年12月、海外のテック系ウェブメディアから「Spartan」というコードネームのWindows10用新ブラウザの開発が進んでいることを記事として掲載。そして年明け1月に開催されたWindows 10の基調講演にてMicrosoft側も「Project Spartan」として新ブラウザが開発中であることを認めました。また、新ブラウザは新しいレンダリングエンジン「EdgeHTML」で動作し、これは新ブラウザのみに搭載されることが明らかになりました。
その新ブラウザの名称「Microsoft Edge」が正式に発表されたのは、2015年4月29日に開催された開発者向けイベント「Build 2015」でのこと。1994年に初代Internet Explorerがリリースされてから21年が経過した名称との決別はこの日の新名称の発表で確定となりました。

一方で、合わせて発表されたロゴはこれまでのInternet Explorerと近しく、「e」の文字を大きくフィーチャーしたものでした。Internet Explorerは全世界的に見ても50%超のユーザが利用しており(※)、既存のWindowsユーザに対してインタフェース上で戸惑いを与えないための配慮がされたものと推察されます。

※ネットアプリケーションズ 2015年5月ブラウザシェアより

また、「廃止」という扱いになっていますが、引き続きInternet Explorerは存続することが確定している模様です。ただし、あくまで古いページやウェブアプリなどの閲覧、たとえばMicrosoft Edgeではサポートしないことが決定したSilverlightで動作するウェブアプリなどに限定しての利用をMicrosoft側としては想定しており、今後Internet Explorer自体へのサポートは一定期間継続するものの、バージョンアップの予定はないということです。こういった関係者の言動からも実質的に将来どこかのタイミングで終了する、とみなすのが自然かもしれません。

2.ウェブ標準への準拠と新しいユーザ体験の提供

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次に、Microsoft Edgeの開発方針に焦点をあてます。昨今のInternet Explorerのアップデートごとに進めてきたウェブ標準準拠のスタンスをより一歩踏み出したものとし、「Interoperability」、すなわち相互運用性を重視するということを明言しています。このスタンスがどういったことを意味するか、それは今後新ブラウザがウェブ標準から外れる仕様変更に迫られるような状況になったとき、ウェブ標準や他のブラウザの更新内容などと足並みを揃える、ということです。過去のアップデート時はその独自スタンスがゆえに「MS独自ルール」と揶揄されるほどでしたが、この発言から今後は開発者泣かせのことがなくなるのでは、と推測されます。

続いて、Microsoft Edgeの機能面を見ていきます。現時点でMicrosoft側から発表されていることをまとめると、トピックは以下となります。


1)手書き入力への対応
2)Cortanaとの連携
3)OneDriveとの連携
4)そのほか新機能の追加

それぞれ、順に追って見ていきましょう。

1)手書き入力への対応

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Microsoft社Windows 10のティザーサイトには以下のような記述があります。

Microsoft Edge は、Web ページ上で直接メモを取ったり、書き込んだり、落書きしたり、ハイライトしたりできる唯一のブラウザーです。秘密の材料やアレンジをレシピに書き込んで料理仲間とシェアしたり、新しいプロジェクトを同僚と共同で作業したり、お子様と楽しんだりできます。あなたのカラー パレットで Web を色鮮やかにしましょう。 まずは、表示している Web ページにWeb ノートのアイコンの画像 を使って手書き入力を始めましょう。

先日リリースされた「Surface 3」においても自社製スタイラス「Surfaceペン」前提でのユーザ体験をひとつの差別化ポイントとしてフィーチャーしていますが、上記文面およびプレビューサイトの内容などから推察するに、そうしたスタンスはこのMicrosoft Edgeにも踏襲されている、と思われます。
今回のブラウザ上での手書き入力対応で強化されるだろうスタイラスとの連携は、モバイルデバイス上で抱えていた入力や編集といった作業に対する煩わしさを解消していくことが期待されます。
そして、そうした変化が生み出す新たなブラウザ体験はモバイルデバイス上での可能性を広げていくものになっていくのではないでしょうか。

2)「Cortana」との連携

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「Cortana」は、iPhone、iPad上での「Siri」、Android上での「Google Now」他の音声アシスタントアプリと同様、「パーソナルアシスタント」と定義されています。発表自体は2014年の4月、そして初期バージョンは2014年の8月に一部の国で利用できるようになっています。Windows 10のリリースを控え、続々と新機能が追加されてきており、先のビルドでもメール送信機能への対応が実装されました。

Cortanaと新ブラウザの連携では、ブラウザ上にCortanaが常駐し、ブラウザを経由した通信履歴を参考に、関連性の高いとCortanaが判断したコンテンツを表示する、といったことが想定されています。たとえば、ユーザがレストランのウェブサイトを閲覧している時に、Cortanaがそのレストランへの行き方や詳細情報、或いは予約ページまで表示してくれる。そして、続いてユーザが交通機関の名称をアドレスバーに打ち込んだ際に、その交通機関のウェブサイトのトップページが表示されるのではなく、予約ページが表示される。
すなわち、ユーザがブラウザを通じてCortanaとコミュニケーションを図ることにより、そのコミュニケーションからCortanaが持続的に学んでいく、ということです。 Cortanaとスタイラスペンとの併用で、ブラウザでの閲覧にはキーボードでの入力は不要となる、そんな時代も遠くないかもしれません。モバイルデバイスでの弱点であった情報のインプットという弱点を補完するだけでなく、連携した新サービスの登場も考えられます。

3)OneDriveとの連携

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2014年頭にSky DriveからOneDriveへと名称が変更になったMicrosoftのストレージサービスですが、Windows 10で強化されるようです。新ブラウザとどのように連携を図るのか、といった具体的なことはまだ不明ですが、先の「手書き入力」やダウンロードした画像や音楽データなどのファイルを直接保存することが手軽におこなうことができたりする、ということが考えられます。あるいは、ブラウザからの保存先をクラウド上のOneDriveに指定することでローカルにファイルをダウンロードしない、ということも考えられます。音楽や動画など大容量のファイルが増えている中で通信が発生しないというメリットはまだまだ大きいことを考えると、そのような連携も十分ありえます。

また、すでにMicrosoft Edgeプレビューサイト上で発表されている、「ハブ」と呼ばれるリーディングリストやブックマークなどの保存先がOneDriveになる、ということも考えられます。
これらの機能は通信環境が以前より大幅な向上を見せているとは言え、外の環境で利用することが前提のモバイルデバイス視点だと大きなメリットとなりえます。他にもストレージとの綿密な連携で考えられる機能は多いので今後の展開に期待がかかります。

4)そのほか新機能の追加

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最後に、そのほかの機能追加についてですが、既に本文中でも上げてきた、「手書き入力」、リーディングリスト、オフライン閲覧やハブ機能などのほかに、ブラウザ拡張機能の「Extensions」や「Project Oxford」と呼ばれる「Face API」、「Speech API」、「Computer Vision API」というAPIを利用したLUIS(Language Understanding Intelligent Service)直訳すると、「言語理解の知的なサービス」と呼ばれる、サービスを組み込んでいく、ということも可能性として示唆されています。

本記事執筆中の7月初旬時点ではMicrosoft Edgeのデベロッパーサイトにはそうした情報は掲載されていないため、Windows 10リリースのタイミングでは実装はなさそうです。しかし、こうした機能とモバイルデバイスとの連携は新たなサービス創出の可能性を踏まえると、どこかのタイミングで実装されていくのではないでしょうか。

まとめ

今回の記事では「Microsoft Edge」の開発方針と機能を中心にモバイルデバイス上でのユーザ体験がどのように変わっていくのか、についてまとめました。「ブラウザ上での手書き入力」や「Cortanaとの連携」などを通じて生まれる体験はこれまでのモバイルデバイスでの利用体験を大きく刷新する可能性を秘めています。
このような新たな機能面の展開にも注目が集まりますが、今回の新ブラウザ「Microsoft Edge」のリリースで一番特筆すべきなのは開発方針のところで挙げた「相互運用性の重視」ではないでしょうか。
「相互運用性」を担保することでGoogle ChromeやApple Safari、Mozilla Firefoxなど主要ブラウザとの競争は激化していくものと思われます。その競争を制していくにはスムーズかつシームレスなユーザ体験の提供が必須です。そうした状況に身を投じたMicrosoftはすでにそこに勝機を見出しているのかもしれません。モバイルの新たな未来を切り開く「Microsoft Edge」、そして「Windows 10」の動向に期待がかかります。
今後も「タブレット活用ブログ」ではWindows10関係の情報を提供していきますのでどうぞご期待ください。

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