~Windows 7はいつまで使い続けられるのか?~
なかなかWindows 10に切替えられない管理者が検討すべき移行計画
Windows 7のサポート終了までいよいよ4ヵ月に迫りました。IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社が8月21日に発表したプレスリリースによると、日本国内における2019年第2四半期(4月~6月)のトラディショナルPC市場出荷台数の実績値は、法人市場が前年同期比63.5%増となっています。これはもちろんWindows 7からWindows 10へのリプレース需要によるもので、7のサポート終了を目前に控え、前年度あたりから続いていた企業のWindows 10移行のピークが訪れているといえるでしょう。
しかし、反面次のようなデータもあります。米調査会社のNet Applicationsが定期的に発表しているOS別のシェアをみると(※)Windows 10の普及は進んでいますが、2019年7月の時点でいまだWindows 7も30%以上のシェアがあるということです。Windows 7がサポート終了することに全く気付かない、または分かっていても無視しているという極端なケースは考えにくく、認識はしているけれども様々な理由でWindows7を使い続けなければならない、Windows 10に移行できないというパソコンが残っているものと思われます。主な理由は買い替え等のコスト的な面と、Windows 7でしか動かないアプリやシステムを使い続けたいというものでしょう。
しかし、かといって、セキュリティ上このまま時期を過ぎてもWindows 7を放置しておくわけにはいきません。「移行がためらわれる機器」の場合、どのような対策を取るべきなのでしょうか?この記事では、まだWindows 10化していない、どうしてもWindows 7で使い続けたいシステムがある等のケースの場合に取るべき対策と移行のヒントを紹介していきます。
※マイナビ ニュース「Windows 10増加 – 7月OSシェア」
Windows 7最後の延命措置は利用するべきか?
Windows 7は2020年1月14日に無償サポートを終了します。これはセキュリティ更新プログラムのサポートが打ち切られるということを意味します。そもそも2009年にリリースされたWindows 7はメインストリームサポートが2015年1月に打ち切られており、現在は延長サポートという位置付けで、セキュリティ更新プログラムだけ提供されているという状態です。
本来ならとっくに移行を終えていて然るべきなのに、未だ企業には多くのWindows 7端末が残っているという現状はWindows XPのサポートが終了した2014年春の状況と似ているといえます。当時は欧米の大企業や官公庁、政府が億単位の契約金をMicrosoftに支払うことで特別にサポートを延長したというニュースが話題になりました。
そして今回、Microsoftは法人向けの「Windows 7 延長セキュリティ更新プログラム(ESU)」という有償サポートを用意することを発表しました。これはWindows 7の延長サポート終了後も最大3年間(2023年まで)セキュリティ更新プログラムを提供する有償契約で、以下のような条件付きです。
- ・ボリュームライセンスが対象
- ・デバイス単位での課金
- ・毎年価格が上昇していく
肝心の価格ですが、Microsoftは一般には公開していません。しかしパートナー向けには出回っているようで、アメリカのニュースサイトZDNetが今年2月にリークしました。それによると1年目はデバイス1台あたり(Windows 7 Proの場合)50ドル、2年目が100ドル、3年目は200ドルとのことです。
この価格ははっきりいってかなり高いと思います。3年めいっぱい契約すると350ドル、日本円で約37000円です。パソコン1台あたり、この価格です。2023年以降また対策を考えないといけない一時的な延命措置のためにこの値段を払うのであれば、それをWindows 10移行のためのソリューションに回した方が得策ではないでしょうか。
次の章では続いて、Windows 7を使い続けたい端末、Windows 7でなければ使えないシステムに対して、今からでもできるWindows 10移行へのファーストステップを紹介していくことにしましょう。
クラウド化と仮想化で進めるWindows 10移行
方法1.アプリ、システムのクラウド化
最初に提案したい方法は、「Windows 10と互換性がないシステムを刷新する」ことです。今からだと改修ができない、間に合わない、という声があがりそうですが、クラウドサービス利用に切り替えてしまうという手があります。移行期間は従業員規模やシステムの規模にもよりますが、既存サービスが構築されている状態に載せ替えるだけなので、そこまで大企業でもない限り移行に時間はかからないはずです。既存のパッケージが多く出回っている経理、会計、人事などのシステムが特に適しているでしょう。Windows 10への移行の足かせになっていたシステムをすんなりとクラウド化できれば、駆け込みで端末をWindows 10へアップグレードできることになります。
クラウド化後のメリットとしてはバージョンアップに伴う互換性確保の対応やメンテナンス、障害復旧などもベンダーが実行してくれるので、自社でやる必要がなくなる点です。逆にデメリットは、対応がサービスを提供する側に委ねられるため個別のリクエストに応じてくれない、クラウドサービスの導入でネットワーク回線への負荷が大きくなる等があります。
方法2.仮想デスクトップ環境Windows Virtual Desktopの導入
すぐにはシステムをクラウド化できない、という方のために続いての方法を紹介しましょう。これもクラウドの一種といえますが、仮想デスクトップ(Daas)の導入です。Windows 7のデスクトップ環境及びアプリケーションをそのままクラウド上にホストしてしまい、それをリモートアクセスのように利用することで、実際の端末はWindows 10へ切替えることが可能になるというわけです。仮想デスクトップソリューションは様々なベンダーから提供されていますが、ここで紹介するのはMicrosoftから提供されているWindows Virtual Desktop というAzure環境上のデスクトップ・アプリ仮想化サービスです。
実はこのWindows Virtual Desktopで利用できるWindows 7の仮想デスクトップ環境に対しては、ESUが無償で2023年までサポートされるのです。仮想デスクトップ環境を導入し、さらにアプリも仮想化することで、アプリが実機端末と切り離され、古いアプリにアクセスする端末もWindows 10への移行が可能になるというメリットがあります。たとえば古いIEのバージョンに依存する自社システム等がある場合等のケースで、特に有効でしょう。
デメリットは、ESUと同じく2023年以降を見据えた計画が必要であること、それに仮想化技術を導入、運用できるノウハウが必要であることでしょう。あとはコスト面です。Windows Virtual Desktop自体の料金は従量課金制とはいえ、他の仮想デスクトップサービスに比べると安価です。ただし条件として、Windows 10 EnterpriseやOffice 365といったボリュームライセンス製品のサブスクリプションライセンス(年間契約)を持っていないとWindows Virtual Desktopは利用できません。既存でライセンスを持っていない企業の場合、そこから導入が必要になるのでコストが嵩むことになります。
しかし、まず移行困難だった社内の実機端末をWindows 10化できるという、その一歩が大事であり、Windows 7を残置しておくことに比べて大きなメリットです。仮想化したアプリは2023年までに(なるべく早くが望ましい)Windows 7環境からWindows 10またはWindows Server 2012/2016といった環境に適応できるように対応が必要ですが、仮想環境で動かす運用を継続すれば、半期に一度のWindows 10の大型アップデートをスルーすることも可能なので、長期的にみても検証や改修の工数が減少するという利点も生まれます。
まとめ
2020年問題ともいわれるWindows 7のサポート終了までいよいよ時間がなくなりました。現時点で「まだ7のまま残っている端末」というのは、移行を考えたが断念せざるを得ない何らかの事情があるものと思われますが、放置するわけにはいきません。本記事ではESUを始めとした対策を幾つか紹介いたしましたが、基本はWindows 10へアップグレードすることが必須です。ESUは最後の手段とし、まずはWindows 10で使えるようにアプリやシステムを改修するか、仮想化ソリューションを導入することをおすすめします。 タイミングとしては今が最後のチャンスといえます。諦めていた方も是非Windows 10への移行を進めてください。
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