防爆ゾーンIT化の足がかりとなるか?究極のタフタブレット「TOUGHPAD FZ-E1/X1」モデルをレポート

2016/01/07
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ビジネスシーンにおけるタブレットPCの使用は増加の一途をたどり、企業によっては一人に1台支給しているところも少なくありません。しかし、いわゆる一般的なビジネスシーン以外においても我々が見えないところで活躍しているタブレットPCがあることをご存知でしょうか。

今回ご紹介する「タフパッド」シリーズはパナソニックが開発・販売している防塵・防水・耐衝撃性能に優れた、文字通り「タフ」なタブレットPCです。「タフパッド」は主に、建設、製造、医療、物流といった、ヘビーな利用が見込まれる現場での利用を想定した製品シリーズです。

そんなタフパッドシリーズに、さらに特殊な現場に向けて作られた防爆モデル「TOUGHPAD FZ-E1/X1」が加わりました。今回の記事ではこの「TOUGHPAD FZ-E1/X1」についてパナソニック国内営業部営業企画課主務の市川良紀さんにお話を伺いました。

まずはじめに「TOUGHPAD FZ-E1/X1」モデルの概要について教えてください。

このたび発売された「TOUGHPAD FZ-E1/X1」は5インチの液晶ディスプレイを搭載し、片手で持ち運びができるサイズの「防爆」モデルのデバイスです。

「防爆」とは、石油精製、石油化学、化学合成プラントなど可燃性ガスや可燃性液体が気化している場所、及びその周囲において、爆発を引き起こす可能性を排除することのことです。「TOUGHPAD FZ-E1/X1」シリーズモデルは爆発危険箇所の危険場所の分類で「Zone 2」で利用する機器に求められる機能、性能を有しており、日本国内における防爆検定に対応することができました。これまでの防塵・防水・耐衝撃といった特長に加え、「防爆」が加わったことでより一層「タフ」になった、と言えるでしょう。

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取材当日は東京国際フォーラムにて「頑丈モバイルPC内覧会」が開催されていた。イメージキャラクターは話題の日本ラグビー代表の面々。タフなイメージが伝わってくる。

防爆モデルというのはどのような特徴があるのでしょうか。

防爆モデルが求められる場所とは火花や静電気レベルの小さな熱源ですら爆発が引き起こされる可能性があるところです。そのため、衣服などの擦れだけでも発生する静電気に対する措置として本体全体に静電防止加工を施しています。また、革ケースが付属しているのも帯電防止の役割を果たすためです。革ケースにはまた、衝突などが発生した際の液晶画面の破損を防ぐことも目的となっています。

そのほか、高熱によっても爆発することがありますので、本体が高温にならないような設計にするなど、通常のタフパッドに比べて内部構造を若干変更し、万が一に備えています。

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革ケースが標準付属しているが、これを取り外すと防爆基準を満たさない。防爆エリアでの使用の際は必ずケースを付けなければならない。

もうひとつの特徴として、NTTドコモとauの音声通話に対応している点があります。

以前は、防爆エリアで使える通信機器は特別な仕様の防爆PHSのみでした。防爆PHSを導入するためには、エリア内に防爆アクセスポイントを設置する必要がありました。これらの導入には多額の費用が必要となるため、導入企業には初期投資の負担が重くのしかかっていました。しかし、今回のモデルではNTTドコモとauのキャリア対応を実現したことで、手軽に通信環境を確保できるようになりました。

その他の特徴はどんなところですか?

800万画素のカメラ機能と、バーコードリーダーを搭載しています。これまで、タブレットPC、PHS、カメラ、バーコードリーダーなどは、それぞれ防爆モデルを別々に用意する必要がありましたが、TOUGHPAD FZ-E1/X1モデルならば1台持っていけばよいというメリットがあります。バーコードリーダーやカメラで取得した情報をそのまま同じ端末でデータ送付できるため、作業効率の改善や新たな保守点検の在り方なども模索していけるようになるでしょう。

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右側面には、電源端子とmicroUSBポートがある。その他自由に機能を割り当てられるファンクションキーが1個ある。

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左側面には機能スイッチが2個。ここにも自由に機能を割り当てられる。

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背面のカメラは800万画素。

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上面には電源ボタンとバーコードリーダーが配置されている。

Windows版とAndroid版が用意されていますが、なぜでしょうか?

タフパッドシリーズは、もともとWindows版とAndroid版を展開していましたので、その流れです。Windows版では、MicrosoftのVisual Studioで作成したアプリを流用できるため、以前から業務用にVisual Studioでアプリケーションを作っていた企業は、Windows版を利用することでこれまでのアプリケーションを引き続き活用していくことができます。 img_pana07 Windows版「TOUGHPAD FZ-E1」。OSのバージョンはWindows Enbedded 8.1 Handheld Update 2を搭載。

一方Android版は、新規導入を検討している企業向けになると想定しています。Google Playにて販売されている業務用の汎用点検ソフトなどをインストールして利用することを想定しています。アプリの開発コストが不要で、これまでと比較すると初期コストも大きく下がるため、導入はこちらのほうが簡単かもしれません。 img_pana08 Android版「TOUGHPAD FZ-X1」。OSにはAndroid 4.2.2が搭載されている。

具体的にはどのような使われ方を想定しているのでしょうか。

Handbookのようなクラウドサービスで電子マニュアルを閲覧したり、作業中の不明点を電話で上司に報告・相談したりということがまず想定されます。加えて必要であれば、写真を撮ってそれを添付して送ることもできるため、現場から遠い場所からでの作業指示も格段にしやすくなるのではないでしょうか。

また、バーコードリーダーを活用することで交換部品の履歴管理などもスムーズになります。

防爆モデルのタブレットPCを使って作業をするメリットとは?

日本の製造業で近年大きく問題となっていることのひとつとしてノウハウの継承が挙げられます。高度成長期に多数作られた化学合成プラントなどにおいて、当時から働いていた作業員の方の高齢化が進んでおり、引き継ぎは喫緊の課題となっています。こういった危険な現場で利用できる電子機器はほとんどなかったこともあり、マニュアルやチェックシートは原則全て紙面、補えないところについては各作業員のノウハウとして個々の頭の中に蓄積されている状態です。一朝一夕で学べることでもなく、ノウハウを引き継ぐには多くの時間を要します。ベテランの作業員の方の定年退職が迫る中、企業はIT化での代替を模索しています。

しかし、非常にセンシティブな防爆エリア対応のIT機器はそもそもとても少ないのです。今回弊社からリリースしたTOUGHPAD FZ-E1/X1モデルは防爆エリアへの導入が可能になるため、こうした問題への対応が大きく前進していくことが期待されています。

引き継ぎのような大きな課題以外でも、日頃の保守点検作業も作業効率の大幅な向上が見込めます。たとえば、バーコードリーダーで部品の交換時期をチェックし、在庫が少なくなれば自動発注、ということをシステムと連動して対応することも可能です。現場から管理者の指示を仰ぐために、通話したりメールをすることももちろんできます。点検用のマニュアルや写真をクラウドにアップしてデータ管理し、複数の拠点でデータ共有をするということもできるようになります。

また、クラウド上にインストールされたメンテナンスソフトによる管理は設備の稼働率の向上に寄与します。工場では不意な故障を予防するために「予防保守」を実施していますが、これまでの紙面での管理がITへ置き換わることでより精緻かつスピーディ、そして抜け漏れがないメンテナンスを可能にします。

また、非防爆エリアでは通常のタフパッド、防爆エリアではTOUGHPAD FZ-E1/X1モデルというように、組み合わせて利用することにより、現場での共有効率も向上し、生産性も大きくアップすることが期待されています。

まとめ

TOUGHPAD FZ-E1/X1モデルの開発には2年の期間を費やしたとのことですが、これは長きに渡り堅牢なパソコンやタブレットを開発してきたパナソニックだからできたことであり、おそらくノウハウもない中でゼロから防爆モデルを作ろうとしたら、もっと年月がかかったのではないでしょうか。

昨今、日本の企業は工場を海外に移転する傾向にあり、国内で新規に立ち上がった工場は少なく、過去からの工場のメンテナンスが増加傾向にあります。そのような状況に対し、初期コストを抑えながら工場でのメンテナンスをIT化できるTOUGHPAD FZ-E1/X1モデルは大きな注目を集めています。

2015年10月の発売にもかかわらず、すでに企業への導入が進み、問い合わせも増えていることがその注目の高さを証明しています。TOUGHPAD FZ-E1/X1モデルの登場により、遅れていた防爆エリアのIT化が一気に前進していくのか、今後の動向に注目が集まります。

参考:【公式製品サイト】タフパッド FZ-E1/X1 防爆モデル

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