SalesTechとは? テクノロジーを活用して効率的な営業活動を実現
営業の効率化を実現する方法として「SalesTech(セールステック)」という言葉を聞いたことはないでしょうか。今はまだ国内での知名度はそれほど高くありませんが、海外では着実に広がっています。今回はSalesTechとは何か、どこが優れているのかを解説しながら、その未来も見ていきましょう。
SalesTechってどういうもの?
SalesTechという言葉自体にはなじみが薄いかもしれませんが、金融×テクノロジーのFinTechや、人材×テクノロジーのHRTechと同様に、Sales(営業)×テクノロジー、つまり、ITテクノロジーの力で営業活動を支援する手法やツールのことです。
これまでも営業活動においては、SFAやCRMのようなツールの導入が進みつつありますが、テクノロジーの進歩によりSalesTech領域は更なる進歩を遂げています。 最新のSalesTechに関するレポートはこちらの記事もご参照ください。
SalesTechは大きく7つに分けられる
SalesTechは、大きく次の7つの分野に分けられます。この7つの分野で、営業現場の改善から管理者(マネジメント)の手助け、顧客満足度を高める仕組み、そしてこれらを社内に浸透させる教育まで、営業関連業務のすべてをカバーします。
1.セールス・イネーブルメント
従来のSFAが得意であった営業活動の管理だけではなく、営業業務支援や効率化、成功パターンの共有など、データや情報を用いて営業活動を一貫して改善する手法。
2.ビジネス・インテリジェンス
業務データやデータベースの解析を行い可視化することで、営業効率や意思決定をサポートするツール。また、単にデータを整理してまとめるだけでなく、AI(人工知能)技術を用いてデータ上の予測や示唆を提供することも可能。
3.顧客関係管理(CRM)
顧客情報をデータベース化し、顧客の属性情報や行動履歴を管理することで効率的で効果的な営業活動を実現する仕組み。
4.カスタマーサポート/カスタマーサクセス
既存顧客の課題や潜在的な悩みを解決することで、顧客との関係を良好に保ち、サービスリテンションやポストセールスに貢献する機能をサポートするツールや仕組み。
5.顧客体験(CX)
潜在顧客や見込み顧客の属性や行動履歴に合わせ、最適なカスタマージャーニーを設計することでマーケティング・セールスプロセスを簡素化するための仕組み。
6.コンタクトコミュニケーション
チャットボットやオンライン商談システムに代表されるコミュニケーションツール。お問い合わせや顧客対応の効率化を促進するツールや仕組み。
7.人材開発・コーチング
営業担当者のセールススキルの底上げや営業支援ツールの効果的な活用を促すことで、営業人員の継続的な教育や管理を行う手法。
SalesTechが注目されている背景は?
では、SalesTechが急速に注目され始めているのにはどのような背景があるのでしょうか。
日本の少子高齢化が急速に進み、人口減少が続く中、企業においても人材不足が課題となってきています。営業部門においても人員不足に悩まされていることも多く、売上を向上させるために増員を試みてはいるものの、営業人材の戦力化には時間がかかり、即効性のある施策を実施するのは困難です。
また、働き方改革の取り組みのひとつである労働時間の削減により、営業担当者は今まで以上に営業効率化を図り、生産性を向上させることが必要となってきました。
こうした状況を打破するためには、限られた営業リソースの中で正しく意思決定し、効率的な営業活動をスピーディーに進めていく必要があります。
そのために登場したのが、最先端のIT技術を駆使することでデータを用いて営業活動を強化するSalesTechという概念なのです。
自社に合ったサービス・システムを導入しなければ、効果は現れない
さきほどSalesTechには7つの分野があると説明しましたが、SalesTechはそれぞれの分野に数多くのサービスやシステムが展開されています。テクノロジーの力で営業活動の生産性を向上させたいのであれば、その膨大な数のなかから自社に合ったサービスやシステム、ツールを検討し、適切に導入する必要があります。
なぜなら、自社に合っていないサービスやシステム、ツールを導入しても、コストと時間がかかるだけで効果が表れないからです。仮に効果が表れたように見えても、一時的なもので終わってしまい、コストを回収できるだけの結果に結び付かないこともあり得るからです。
ただ、SalesTechにどんな製品やサービスがあるかを知らなければ、そもそも自社の課題解決に役立つ製品を探し出すことはできません。また種類も数も多いために、自社の状況に合ったものを選択するのは大変です。導入を検討する際には、まず自社の課題を整理し、SalesTechの全体像を理解した上で、課題の解決に効果的なソリューションについて、見識を深めていく必要があります。
SalesTechがもたらす4つのメリット
SalesTechを導入し活用していくことで、マネジメント・営業担当者がメリットを享受することはもちろん、顧客の満足度を上げることにもつながります。
1.マネジメントが営業担当者の状況把握を行いやすくなる
マネジメント側のメリットは、営業担当者の活動内容や予定、業績の把握が楽になることです。サービスやシステムが導入されていなければ、担当者一人ひとりにヒアリングを行ったり、頻繁に進捗確認ミーティングを行う必要があります。それでは時間もかかりますし、正しく状況把握できる保証もありません。
しかし、SalesTechを導入していれば、営業担当者の動向をデータとして管理でき、問題点の早期発見にもつながります。これにより適切なアドバイスや困っている営業担当者のフォローが容易になり、業績アップにつながります。
2.社内業務の効率化が進み、本来の営業活動に集中できる
営業担当者にとっては、SalesTechの活用により、無駄な業務の削減や効率化につながるというメリットがあります。実際に、営業担当者が商談をしている時間は、稼働時間全体のたった2割という調査結果もあることから、営業担当者が顧客と接することができる時間をどのように増やすかが課題であると言えます。
営業支援ツールなどを導入することで、不必要な訪問・提案書作成を回避したり、間接業務が効率化されれば、本来注力すべき営業活動に集中することができるようになります。
3.営業活動を通じた情報の共有が可能になる
SalesTechツールが効果的に活用され、情報の可視化が進むと、営業担当者同士の情報共有も容易になります。営業活動を通じて得られた顧客の固有の課題を、営業担当者の頭の中やPCのデスクトップに閉じることなく共有されることで、マネジメントや他の営業担当者は貴重な情報を苦労することなく得ることができます。
多くの顧客が潜在的に抱えている課題の共有や、商談で効果的だったセールストークなど、無形のノウハウが共有されることで、自然と営業部門のスキルアップや成功体験の積み重ねにつながることでしょう。
4.クライアントや営業先へ効果的なアプローチができる
前述したように、顧客情報が的確に共有され、誰もが使える状態になっていることで、クライアントや営業先に効果的なアプローチをすることが可能になります。
また、最近ではAIが顧客データを処理するツールも多く、これまでは気付くことができなかった優良顧客の共通点や営業担当者の活動傾向、今後必要となるサービスなどの予測もできるようになります。こうしたデータを分析し、実際の営業活動に適用することで、顧客に対する提案の精度が高まり、満足度の高いアプローチができるようになります。
SalesTech導入で大きく変わる営業環境
このように、SalesTechの導入・普及には大きなメリットがありますが、さらにSalesTechが普及し、当たり前になると営業を取り巻く環境はどのように変化するのでしょうか。
SalesTechソリューションを提供するサービス企業、選択肢が増える
SalesTechは日本国内よりも海外の方が多数のソリューションが存在しています。日本でも今後導入する企業が増えてくれば、それに伴ってSalesTech関連のソリューションを提供する企業も増えていくでしょう。
こうしたソリューションが増えることで、マネジメントは常に自社の営業成績や効率性をチェックし、その時々に最適なツールやサービスを選定する必要が出てきます。 複数のツールやサービスを並行して使うという状況は必然となるので、自社の状況を正しく把握する能力や、ITツールに対してのリテラシーも求められるようになるでしょう。
データドリブンな営業活動で、行動予測に基づく戦略立案が可能になる
SalesTechのソリューションを利用することで大きく変わるポイントは、自社が抱える問題点が可視化され、詳細な分析が可能になることです。さらにAI技術を活用すれば、見逃しがちだった課題や変化をキャッチしたり、共通点や傾向を正しく把握できるようになるなど、新たな視点で営業戦略を立てることが可能となります。
とはいえ、そのデータをどう解釈し、次にどのような施策を行い、行動を起こすかは、人の判断によるものです。SalesTechのソリューションは、自社の営業の質を向上させ、営業業務を効率化する取り組みの実現に向け、新しい視点を与え、マネジメントの判断をサポートする強力な助っ人となることでしょう。
まとめ
SalesTechは、今後の営業戦略や効率化に大きく貢献する可能性があることから、多くの企業で導入が進んでいくことでしょう。日ごろから情報収集のアンテナを高く保ち、業界や競合の動きを注視していく必要があります。
ただし、ツールやサービスの導入に際しては現場や関連部署の意見も取り入れる必要があります。しっかりと問題点を抽出し把握することで、自社に適したSalesTechを導入していきましょう。
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