~iPadがついにマウスやZipファイルに対応!?~
iPad OS Beta版を使ってわかった、iPadの新たなビジネス活用

2019/08/14

今年6月に開催されたアップルのWWDC(世界開発者会議)においてiPad OSが発表されました。発売以来約10年iPhoneと共通のiOSが採用されてきたiPadですが、今秋iOS13にアップデートされるタイミングでOSが独立し、iPadのために設計されたOSが初登場するということで、大きな話題を集めています。

「よりパソコンに近付く」とか「ビジネスユースに便利になる」というワードが先行して報道されているように見受けられますが、OSが刷新されることで、今までのiPadと使い勝手が大幅に変わってしまうのではないか、と不安に思われる方も多いでしょう。

この記事ではiPad OSの主な新機能をご紹介しながら、実際にそれらの機能をパブリックベータ版で使用してみたレポートをお伝えすることで、iPad OSの企業での活用について事前に分析したいと思います。

1.iPad OSの主な新機能

まずiPad OSでは、どのような機能が新しく追加または改良される予定なのか、現時点で判明している情報から主なものをまとめてみましょう。絵文字やゲームなどに関するものは割愛し、主にビジネス使用において役立ちそうな機能をピックアップします。

表:iPad OSの主な新機能

新機能、改良された機能 機能の説明
マルチタスキング機能の向上 同じアプリケーション同士でSplit View可能になる等
新しいホーム画面 ウィジェットが表示されお気に入りのアプリを常時表示可能
Apple Pencilの進化 定規、ピクセル消しゴムなど新しいパレットと、感度の向上
テキスト編集 カーソルの瞬間移動、コピペ、Undoがジェスチャーによって可能に
フォント カスタムフォントがインストール可能に
ファイル ローカルストレージ(iPad内)にフォルダ作成して管理可能、USBメモリやSDカードなど外付けストレージデバイスの直接のファイル管理を実現
カラム表示、ZIP対応、ファイルサーバに接続、書類スキャナ
メモ サムネール表示、共有フォルダでのメモ共同編集
フローティングキーボード ソフトキーボードの位置を変更可
マウス対応 アクセシビリティ機能の一環として有線(USB)および無線(Bluetooth)マウスのサポート

ほかにも色々な機能が盛り込まれているようですが、代表的なものは以上となります。広範囲に渡って変更が加えられているという印象ですし、特に「ファイル」や「新しいデスクトップ」などと聞くとiPadの概念や操作性、ユーザーインタフェースなどが従来のiOSから大きく変わってしまい逆に使いづらくなるのでは?という不安も生まれます。次の章からは上記表の機能を中心に、実際どのくらい変わったのか、どのくらい便利なのか、iPad OSのパブリックベータ版を使ってみた結果をレビューしていきたいと思います。

2.iPad OSの第一印象は「前と同じ」!?

iPad OSは正式にはこの秋にリリース予定ですが、ひと足先にパブリックベータ版がリリースされており、誰でもアップルの公式サイトからダウンロードして試すことが可能です。筆者も早速iPad Pro(第3世代)にインストールしてみることにしました。プロファイルのダウンロードからインストールはそれ程時間もかからず30分ほどでスムーズに完了しました。いよいよiPad OSとのご対面です。パスコードを入力してロック解除、その見た目の第一印象はというと・・・・・・。

「ぜんぜん前と変わらない!!」 です。

iOS12からどこが変わったのか、しばらく気付きませんでした。ホーム画面のアイコン配置も変わらず、アプリの起動もいつものままです。おそらく一番外観的に変わったであろう「ウィジェット」も、ホーム画面を少し右にスライドさせてずらさないと出てきません。前の章で紹介したような新機能を一つ一つ試していき、それが動くことがわかると、新しい OSだなあ、という実感が湧いてきましたが、特に新機能を試そうとしなければ、ほぼ元のiOSと変わらずに使用し続けてしまうでしょう。

つまり、事前の報道で抱いていた「iPad OSは大きく変わってパソコンのようになり、操作に慣れるのに時間がかかる」という懸念はまったく逆で、「自分から新しい機能を試さない限り、iOSと殆ど同じ」だったのです。単純なインターフェース、直感的な操作といった従来のiPad + iOSの魅力が損なわれていなかったのは安心しましたが、一段踏み込まないとせっかくiPad OSで追加された様々な進化が享受できないのが、やや物足りないという印象も受けました。

3.仕事効率がアップした3大新機能

約一週間、なるべく新機能を駆使するようにしてiPad Proをメインのマシンとして仕事をしてみました。 この原稿もiPad+Office365で書いています。 普段は Windows10の2in1タブレットを使っていますが、iPad OSを入れてみたiPadでも、全く遜色なく作業が進みました。iPad OSの様々な新機能のなかで、特に仕事の生産性が上がると感じた便利なものを3点ほどあげておきましょう。

1.フォルダ、ファイル管理

やはりファイルをローカルで管理できるようになったのは大きく、メールの添付ファイルを編集するためにローカル保存したり、ZIP形式で圧縮解凍できたりするのは仕事をするうえで相当に役立ちました。

2.フローティングキーボード

今まで画面を占有していて邪魔だったソフトキーが縮小化でき、画面の好きな位置に動かせるようになったのですが、これが実に素晴らしい機能改善です。肝心な部分が隠れてしまう、という従来の問題が解消されるほか、小さいiPadであれば片手操作も可能になるでしょう。

フローティングキーボード

3.メモのサムネール表示

最近の iPadをApple Pencilとの組合せで使っている方なら同意いただけると思いますが、「メモ」アプリを高頻度で利用します。打合せ時や、ちょっとしたアイディアを書き留めておく時に大活躍ですが、無題のメモが大量に溜まっていき整理がつかなくなるという課題がありました。しかしiPad OSでメモがサムネール表示されるようになり、後から目的のメモを探すのに非常に便利になりました。

4.期待して飛びつくのはご用心な機能

続いては逆に、ビジネス使用を見越した時に期待しすぎてはいけないと思われる部分について、同様に3点ほど記載しておきます。期待外れというわけではないのですが、現時点で全面的に依存するには注意が必要な機能になります。

1.マウス使用

大きな話題を集めているiPadでのマウス使用ですが、筆者が持っているエレコム社のBluetoothマウスをiPad Proに接続してみようとしたところ、Bluetoothデバイスの検知こそされたものの、ペアリングがいつまで経っても終わらず、結局動作させることができませんでした。インターネット記事ではマウス接続に成功したというレポートも多くあがっていますが、サポートされないデバイスもあるようです。アップルとしてもiPadは指によるジェスチャーで使うことを原則としており、マウスのサポートはあくまでも機能補助という位置づけです。日本企業はマウスが大好きでどんな薄型のパソコンでも必ずマウスがセットで支給されます。「とうとうiPadでマウスが使えるぞ」と意気込むのは早計でしょう。メーカー側から提供される正式な仕様と動作サポートを確認するようにしたいものです。

2.同一アプリでのSplit View

iPad OSでは同一アプリのSplit Viewがサポートされるようになりました。たとえば今までできなかったSafariとSafariでの2画面分割併用といったことが可能になり、筆者も実際に確認することができましたが、サードパーティ社製のアプリにおいては同一データの競合などの対処が必要なようで、必ずしも全てのアプリでこの動作が可能になるという保証はないようです。

3.ジェスチャーの進化、複雑化

ドラッグでのテキスト選択、3本指でのコピー&ペースト、取り消しなど、業務効率化を促進する新しいジェスチャーが追加されましたが、直感だけでは対応できず多少のテクニックを要する操作となっています。知らなければいつまででも使わずに終わってしまうでしょう。スマホやゲームに慣れていない世代の従業員が使いこなすのは難しそうで、トレーニングなどの対策が必要かもしれません。

まとめ

この記事ではもうすぐ(2019年秋)登場するiPad OSの機能と体験レポートをお伝えしてまいりました。パブリックベータ版を使用した筆者の個人的な感想の段階ですが、試した限りではiPadの今までの操作性の良さとインターフェースを継承しつつ、より踏み込んだパソコンのような処理ができるOSに進化した印象です。仕事に使ってみても、欠点はExcelマクロが使えない程度で、ノートパソコンと遜色ないほど作業が捗りました。

これを機に、普段Handbookに活用しているiPadを、業務のメインマシンとして検討するのもありかもしれません。ただし、新機能が全て業務にフィットするように使えるのかというと、未知の部分もあります。出始めのOSは不安定なものです。充分な検証を行って使っていきたいところですね。本番リリース、今後のアップデートを楽しみに待ちたいと思います。

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