「SalesTech」活用ニーズ最新動向

2019/11/29

はじめに

この数年、イベントやWebのニュース、雑誌などで、SalesTechやセールス・イネーブルメントという言葉を耳にする機会が増えました。海外ではすでにメジャーになりつつあるこれらのワードもいよいよ、日本で浸透しはじめたといえるでしょう。そこで、今回は、Sales Techとセールス・イネーブルメントの最新動向について、市場調査のデータを基に解説します。

セールステック/セールス・イネーブルメントの認知度向上

ITR社が行った「営業力の強化・レベルアップに向けたセールステック活用ニーズ調査」によれば、SalesTechや、セールス・イネーブルメントの認知度は図1のような結果になっています。SalesTechもセールス・イネーブルメントも、すでに約半数の方が「言葉は知っている」という結果です。

図1:営業およびマーケティング関連ITの利用・認知度

図1:営業およびマーケティング関連ITの利用・認知度
出典:ITR(2019年11月調査)

とはいえ、「すでに利用している」のは、SalesTechでは、14%と、7人に一人。そして、セールス・イネーブルメントでは、7%、14人に一人という結果です。つまり、認知度は向上し、ソリューションへの理解は進みつつありますが、実際に業務に適用されるのはこれからであると言えるでしょう。

いまだに残る営業課題・・・

つまり、SalesTechやセールス・イネーブルメントについての理解は深まり、市場の注目も高まっていますが、ソリューションの導入はこれからで、営業の課題解決にまでははまだ至っていないというのが実情です。では、実際に、営業現場ではどのような課題があるのか、調査の結果を見てみましょう。

人員の不足と属人化

上位にランクするのは、販売方法の属人化、営業人員の不足、担当者ごとの売上の差です。これらは、販売方法の標準化、営業業務の効率化により少ない人員で効率的な営業を行うこと、若手や経験の浅い担当者が売上を上げるスキルの習得などによって、解決することが求められています。(図2)

図2:営業に関する課題

図2:営業に関する課題
出典:ITRのデータ(2019年11月調査)を基にアステリアが作成

では、営業担当者のスキルに着目して課題を掘り下げてみてみましょう。(図3)

こちらを見ると、最も課題とされているのは「商談現場でのコミュニケーション/交渉スキルの差が大きい」という課題です。これに続くのは「顧客ニーズを把握する能力の差が大きい」「提案・プレゼン能力の差が大きい」といった課題ですが、これらは営業現場で日々、活動をする営業担当者のスキルに起因する課題です。

ところが、営業マネージャーといえども、すべての商談に同行することはできず、チームで共有される営業日報などの情報量も膨大な量になるため、各営業担当者の営業活動の実態、つまり、営業現場の実態を正確に把握するのはなかなか難しいのが実情です。SFA/CRMの導入で売上やパイプライン、顧客情報がデータ化・数値化さているものの、実際、営業力強化について「課題が残っている」と感じている回答が8割を超えており(図4)、商談の現場の実態は、なかなか定量化して表すことが難しいことからブラックボックス化してしまいがちです。そこから現状との乖離が生まれると、営業活動の改善にもつながらないため、まず最初に行うべきは、現場の実態を定量的に把握することであると言えるでしょう。

図3:営業担当者のスキルの差に関する課題

図3:営業担当者のスキルの差に関する課題
出典:ITRのデータ(2019年11月調査)を基にアステリアが作成

図4:営業支援ツール導入後(解決が困難)の課題(複数/単一)

図4:営業支援ツール導入後(解決が困難)の課題(複数/単一)
出典:ITRのデータ(2019年11月調査)を基にアステリアが作成

現場の実態

 

それでは、営業の実態について見ていきましょう。図5のように、営業の業務は、多岐にわたっており、営業の現場の担当者がこうした業務を日々行うことで成り立っています。営業担当者は、日々の顧客訪問・連絡だけでなく、提案資料や見積書などの作成、顧客開拓から既存顧客のフォローアップまで、実に様々な日常業務をこなしているのです。さらに営業マネージャーは、営業の現場の業務に加え、営業活動の数字を把握し、それに基づく営業戦略を検討しつつ、チームの営業担当者の育成やチームのマネジメントを任されています。つまり、営業担当者も営業マネージャーも、非常に多忙であり、余裕がない状態であることがわかります。

図5:営業業務(営業活動)を推進する主体の部門

図5:営業業務(営業活動)を推進する主体の部門
出典:ITR(2019年11月調査)

このことは、営業担当者の指導や教育に関する調査の結果(図6)からも見て取れます。第一位・第二位に挙げられているのは、マネージャーが教育に割く時間、そして、営業担当者自身が学習する時間の不足です。

図6:営業担当者を指導・教育する上での障壁

図6:営業担当者を指導・教育する上での障壁
出典:ITRのデータ(2019年11月調査)を基にアステリアが作成

では、営業担当者のスキル向上に最も求められていることは何でしょうか。図7では、「提案の企画」に続き、「商品サービスに関する知識・事例」や「コミュニケーション交渉のスキルテクニック」「競合他社やその商品サービスに関する知識」などが課題に挙がっています。ところが、現場の教育の主体となっているのは、OJT(On the Job Training)、いわゆる営業同行や、営業担当者自身の自習に頼る点も多々あるのが現状です。そこで、これらに加えて、より効率的に営業担当者を教育する仕組みや制度の整備が喫緊の課題になっていると言えます。

図7:営業担当者のスキル向上で重要なこと

図7:営業担当者のスキル向上で重要なこと
出典:ITRのデータ(2019年11月調査)を基にアステリアが作成

商談現場状況を把握しよう

ここまで見てきたように、営業の現場にはさまざまな課題がありますが、多忙な営業マネージャーや担当者が、営業の効率化に向けた取り組みを実施するためにはどうすればよいのでしょうか。まず実施するべきは、営業の現場、つまり、商談の現場を可視化しデータ化し、定量的に把握することです。

そこで、SalesTechを上手に活用すれば、営業担当者に負担をかけることなく現場の実態を可視化することができ、足りないスキルを把握することができます。そうすれば、そのスキルを身につけるための効果的なトレーニングの実施や的確な教育が可能になるのです。

では、商談の現場を可視化する方法を見てみましょう。図8で紹介しているように、多くの企業は日報などの商談報告を集計・分析して現場の状況把握を実施していますが、これからは、SalesTechを活かし、セールスコンテンツの利用状況の把握や、商談現場の音声などの分析を活用し、現場の実態をより正確に把握していくことが求められています。

図8:商談内容の可視化手法

図8:商談内容の可視化手法
出典:ITR(2019年11月調査)

セールス・イネーブルメントによる解決

冒頭に紹介した「セールス・イネーブルメント」は、セールスコンテンツの利用状況を把握・分析を通して商談現場を可視化することで、チームの営業力を伸ばし、効果を最大化する取り組み・手法として注目されています。

セールス・イネーブルメントの詳細については、以下のブログを参照

https://handbook.jp/blog/2018/11/28/salestech02/

国内でも先進的な取り組み事例が紹介されていますが、活動が長期に渡ること、営業だけでなく経営層や他部門を含めた包括的な取り組みとして語られていること、必要とされるタスクの難易度が高そうに見えることなどから、自社での実施・応用は難しいと思われることもあるでしょう。ところが、そのセールス・イネーブルメントも、次に紹介する3ステップに分けて段階的に実施することで、スモールスタートでありながら、成果を実感しつつ、推進することが可能になるのです。(図9)

図9:セールス・イネーブルメント実現の3ステップ

図9:セールス・イネーブルメント実現の3ステップ

このように、営業を改革するSalesTechやセールス・イネーブルメントは、日本でも急速に認知度を上げつつあり、そのためのソリューション、そして具体的な実施方法や事例などの情報は得られるようになってきました。しかし、それらを「知る」だけではなく、自社の営業現場に適用しなければ、成果を得ることはできません。市場での競争優位を保つために、そして新しい価値を創造するために、成功事例を参考にしながら、自社に合致した方法を見つけ出し、また適したソリューションを選択して、いち早く取り組むことが大切です。そうすることで、成果を早く得ることができるのです。

注目のSalesTechやセールス・イネーブルメント、まずは身近なところからスタートして、貴社の営業現場を改革しませんか。その一歩は決して難しいものではないのです。

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