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セイコープレシジョン・タイランド、
「デリケート」な製造現場で業務改革に挑む

新手のテクノロジーやサービスは、使ってみてナンボ。試行する中で応用領域の幅広さにハッと気づき、大きな効果への期待感が高まる。

身を持ってそれを経験してきたのが、タイムレコーダーやカメラのシャッター、高級壁掛け時計などを製造する精密機器メーカーのセイコープレシジョン・タイランドである。洪水で甚大な被害を受けた同社は復興に際し、アステリアのドキュメント配信・共有サービス「Handbook」と、米アップルのタブレット端末「iPad」の利用を試験的に開始。国内外を見わたしてもあまり例がない「製造現場の業務革新」を目的に、今まさに本格展開へ向け動き出した。

プロジェクトを主導する矢田光永氏と増田修一氏、徳増洋一氏にHandbook導入の経緯と期待する効果、展開の方針を聞いた。

新しい会社をクリエイトしよう!
復興を機にHandbookとiPadを導入

-iPadを製造現場の業務効率化などに活用しているとうかがっています。営業ツールや会議資料の共有にタブレット端末を用いる例はよく聞きますが、製造現場でとなるとまだ珍しい。きっかけから教えてください。

矢田:きっかけは洪水です。ご存じの通り、2011年秋に発生した大規模な洪水でナワナコンの工業団地は一帯が水に浸かりました。当社も例外ではありません。前もって土嚢を積み上げるなど対策を講じていたものの、ある晩に水圧で工場建屋の壁が一部崩れ浸水を防ぎきれず…。

-水浸し?

矢田:あたり一面、身長ほどの深さまで水が流れ込み、ワニみたいな大きなトカゲが敷地内を悠然と泳いでいるような状況でした。12月8日頃に水が引き生産再開に向けて本格的に動き出したのですが、復興するなら従来と同じ状況を取り戻すのではなく、「新しいSPT(セイコープレシジョン・タイランド)をクリエイトしよう」と考え、そのためのツールとしてHandbookとiPadの利用を試験的に始めました。

-実際に使い始めたのは、いつ頃でしょう。

矢田:工場を新設するための用地取得を含む再建計画を立てて2012年3月に着工した後、5月末からです。iPad数台とHandbookでどのようなことができるか、まずは私と徳増が使ってみました。

経営幹部が率先してHandbookを活用
更新頻度が高い情報を随時アップデートして最新情報を共有

-最初はどのような用途で?

徳増:矢田がまとめた洪水被害の状況や復興状況のレポートをHandbookに登録して共有したり、Handbookを介してミーティングで使うメモを配布したり。Handbookに登録しておいた作業標準書や製品検査のフローチャートをはじめとする技術関連ドキュメントをiPadに取り込み、製造現場で参照して製品の仕様に万全を期すなど色々と試しました。

矢田:私が実践した具体的な例を挙げると、新たな工場用地の図面や新工場のパース図をHandbookに登録しておき、親会社である日本のセイコープレシジョンで再建計画を説明する際に使いました。

-使い勝手などの手応えは?

矢田:常に情報をアップデートして共有するといった用途に、iPadとHandbookの組み合わせは使えそうだという印象を持ちました。急ピッチで再建を進めてきたので「用地の候補が決まった」「建築許可が下りた」という具合に、それこそ日ごとに状況が変わるんです。それを即座にドキュメントに反映して徳増と共有できましたから。

-増田さんはいかがでしょう。HandbookとiPadを業務で利用してみた所感は?

増田:私が使い始めた時期は矢田と徳増より後、iPadを5台ほど追加導入した9月頃です。毎月の生産状況をまとめたレポートを矢田たちと共有する用途などにHandbookを活用し始めたのですが、率直に言って便利だと感じました。Handbookに登録したドキュメントを製造現場で表示しながら従業員へ各種状況を説明できるので、最近はラインに行くときはいつも携行しているほどです。

矢田:以前の増田はスマートフォンも使っていなかったのに、今ではすっかり「デジタル工場長」です(笑)。「資料をHandbookにアップしておいたから、各自きちんと確認しておいて」と。

-わずか数カ月で大変身だ(笑)。

増田:操作に迷うことは特にありませんでしたしね。パソコンで作成したドキュメントを簡単にHandbookに登録してiPadに取り込める。しかもiPadは軽いので、Handbookに登録した色々な情報を手軽に持ち運び、いつでも確認・共有できる。そのインパクトは大きいです。

-マネージメント層の働き方を進化させるほどだった。

矢田:マネージメント層といえば、本日は日本出張で不在ですが、社長の熊沢もiPadを持ち歩いています。ちょうど今頃、Handbookに登録しておいたドキュメントをiPadで開きながら、セイコープレシジョンの経営会議で当社の状況を説明しているところでしょう。

精密機器メーカーならではの用途
制約からくる“常識”をHandbookとiPadで打破

-少し意地悪なことを申し上げます。最新情報を見せる、あるいは共有するといった用途ならHandbookとiPadを使うまでもなく、WordやExcel、ノートパソコンで十分に目的を果たせそうです。極端な話、紙の印刷物だって構わない。

徳増:その点については、製造現場ならではの事情があるのです。例えば、機密保持の観点から、製品の図面を所定の場所から持ち出すことを禁じています。ですから設計に何らかの変更を加える場合、製造現場でメモを書き、写真を撮影してから事務所に戻る。そのうえで図面やメモ、写真を照らし合わせて変更を反映する必要がありました。ところがHandbookとiPadを使えば、電子化した図面を現場で確認しながら簡単なメモを付加し、写真も撮れる。ざっと5工程の作業を2工程に縮められるイメージです。

-ちょっと待ってください。iPadを使ったとしても、ダウンロードした図面を所定の場所以外で閲覧するわけですから、ある意味で“持ち出す”ことになります。それは問題ない?

徳増:Handbookはアクセス権やダウンロードの可否をドキュメントごとに細かく制御できますし、あらかじめ定めた閲覧期間を過ぎると、iPadからドキュメントを自動削除する機能も持っています。それらHandbookの機能を活用することでドキュメントの安全性は確保できると考えています。

矢田:セキュリティ以外にも、当社のように精密機器を扱うメーカーに共通の制約もあります。カメラのシャッターやタイムレコーダーの製造ラインはクリーンルームになっており、外部から室内に持ち込むものを制限しているのです。

徳増:どうしても印刷物を持ち込むのであれば、専用の用紙に印刷するかラミネート加工を施し、クリーンルーム内でトナーが落ちないようにします。

増田:当然ですが、クリーンルーム内で作業に就く従業員は全員がクリーンウェアを着用し、女性は化粧をしません。作業中にファンデーションが舞うと製品の品質に影響が出かねないからです。

矢田:わずかな埃も許されないクリーンルームにノートパソコンを持ち込んで、筐体内に溜まった埃が冷却ファンの送風口から出てくることなど、万が一にもあってはなりません。

増田:その点、(駆動機構を持たない)iPadは軽いうえにノートパソコンのように埃を吹き出す心配がない。加えて、Handbookにドキュメントを登録しておきさえすれば、多くの情報をクリーンルームに持って入れる。クリーンルーム内で気になる点があったら、その場で従業員を集めて作業の留意点を確認・説明するといった使い方が可能になるのです。

従来は10分程度、今は数秒単位
Handbookの活用で劇的な時間短縮の効果も手中に

徳増:さまざまな情報を携えてクリーンルームに入れるメリットは、想像しているよりもずっと大きい。最近そう実感しています。

-そこの部分、詳しくお聞かせください。

徳増:私は製品の仕様や作業手順のほか、ネジ閉めのトルクやUV接着で照射する紫外線の強さと時間を規定した技術標準書をiPadに入れて持ち運んでいます。ラインの責任者に作業内容や留意点を説明したり、正しく作業が行われているかを確認したりするためです。

-それこそ必要な部分だけをクリーンルーム用の用紙に印刷して持っていけば…。

徳増:以前はそうしていましたが、ラインを実際に回っていると往々にして新たに確認したい内容が出てくるんです。ところが手元にドキュメントがないため、いったんクリーンルームを後にして事務所に帰り、内容を確認してからクリーンルームにまた戻ってくる。クリーンウェアの着脱時間を含めると、はや足で移動しても往復に10分程度を要します。

-技術標準書などを電子化してHandbookに登録しておけば製造現場で閲覧できるので、数秒単位まで時間を節約できる可能性があるわけですね。

徳増:おっしゃる通りです。実時間の計測はしていませんが、かつては事務所とクリーンルームの間を何度か往復する日もあったので、通年でみたら劇的な時間短縮につながっていることは間違いありません。

マネージャー全員にiPadを配布
効果の最大化に向けHandbookの活用を加速

-更新頻度が高いドキュメントのアップデートと共有の効率化に、製造現場における技術資料の閲覧による大幅な時間短縮。HandbookとiPadの試行を通じてメリットがあることは明らかになったので、あとは効果の最大化に向けて活用を加速させるだけですね。

矢田:ええ。試行フェーズは10月までに終え、活用フェーズに入りました。11月中旬には新たに10台のiPadを導入し、品質保証部門や営業部門を含め、すでにマネージャー職の約半数がHandbookを使い始めています。12月と2013年1月にも約10台ずつiPadを調達し、約50人いるマネージャー全員がHandbookでドキュメント共有できる環境を整える計画です。

徳増:現在30種類ほどのドキュメントをHandbookに登録して共有していますが、対象業務や応用領域、利用者を拡大していくに当たり、「どういったドキュメントを電子化してHandbookで共有するか」、「ドキュメントごとのアクセス許可をどうコントロールするか」といった運用ポリシーを改めて詰め、iPadの配布と並行して明確にしていきます。そしてドキュメントのアクセス権を管理するHandbookのキーコードやユーザー管理の仕組みを使い、これまで通りセキュリティ面に十分に配慮しながら情報活用を加速していきたいと思います。

-すべてのマネージャーがiPadを片手にクリーンルーム内での作業説明や会議に臨む。1月以降は今までとまったく違った光景が広がりそうですね。洪水からの復興でお忙しい中、本日は長時間にわたってありがとうございました。


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SEIKO PRECISION (Thailand) Co.,Ltd.
所在地: 104 Moo18, Nava Nakorn Industrial Estate Zone3, Klong Nueng, Klong Luang, Pathumthani 12120, THAILAND
会社概要: 1988年にタイ国のナワナコン工業団地内に設立された、セイコープレシジョン株式会社の100%出資子会社。セイコープレシジョン株式会社の海外生産拠点として、デジタルカメラ用のシャッタ、交換レンズ用の絞りユニット、タイムレコーダ、クロックの製造や精密機器の受託生産等の事業を展開しています。
U R L: http://www.seiko-spt.co.th/
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